• 惰性で眺めていた紅白が終わると、毎年恒例となった除夜の鐘を突く映像が流れていた。
    「今年ももう終わりか……」
    ふと感慨深げに呟くと、彼女は「そうだね……」と同じく感慨深げに言葉を返した。今年は2人とも忙しかったこともあり、なかなか一緒にいられなかった。だから大晦日にコタツに入りながら一緒にテレビを観ることができたのは奇跡にも等しかった。
    机上に置かれたいくつものみかんを眺めながら、比較的大きなみかんの上に少し小さいみかんを積んだ。鏡餅みたいだと思った。
    得意げになって見せると、彼女は「クリスマスツリーやケーキみたい」だなんて言った。思えば俺とあいつは昔からそんな感じだった。同じものを見ていても受け取り方が違う。一見相性が悪いように見えて、むしろそんな風だからこそ俺たちは互いに居心地が良いのではないか――。そう思うとなんだかこそばゆがった。
    (終)