•  私の両手を強く握り締める友の口の端から、ごぽりと泡が生まれた。

     人間と関わってはならない。古い時代ある姫君が恋に身を焦がし破滅してから、同じ悲劇を繰り返さぬよう定められた規律だ。
     人魚は長命である代わりに魂を持たない、亡骸一つ世界に残さず天に迎えられることすらない。それが報われぬ異種族への想いにより齎される終わりならば、遺される者達の哀しみはどれだけ強いものだろうか。
     人間の世界を見る日を待ち侘びる様子を案じる言葉に、笑い混じりに告げられた「大丈夫」をそれでも信じようとした。誰もが疎んじる私に優しくしてくれる彼女にはどうしても弱かった。その恋と裏切りを知っても尚、変わらない程に。
    「分かりました。魔女の末裔として、貴女に人の足を授けます」
     喜びの声を上げ一層に瞳に宿る熱情を燃え上がらせる彼女から目を逸らし、水泡の行く末を無意味に見上げる。

     光へと真っ直ぐに昇ってゆく泡は、海面へ辿り着く前に潰えて消えた。
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  • スレ主(.gBieN)2022年12月31日
    ファンタジー、繰り返しの始まり。