• 一目惚れ。
    心臓を撃ち抜かれたような衝撃を覚えた僕の心境に、名前をつけるならきっとそれだ。
    長く伸びる艶やかな髪、真っ白な手足、大きな目。
    まさに美女と言って然るべき美しい女性に、当時幼かった僕は夢中になって話しかけた。
    「お姉さん、綺麗だね。」
    彼女は驚いたように目を見張って、次にありがとう、と柔らかく微笑んだ。
    とにかく会話をしたくて、矢継ぎ早に褒め言葉を重ねる。
    目がとっても大きいね。
    ─好きな人を見つめていたくて。
    手も足も真っ白だね。
    ─好きな人に私だけ見ていてほしくて。
    髪がとっても長くて綺麗だね。
    ─好きな人を...



    一目惚れの次の日、男性が絞殺されていたというニュースが流れた。
    僕の一番好きだったお姉さんの長い髪は、次会った時には首元で揺れていて、でも変わらず綺麗だった。
    ─お姉さんは、どうして髪が短いの?
    お姉さんは笑ってこたえた。
    もう、縛る人がいないからよ。
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