•  白紙のおみくじを引いた。記念になると持ち帰ると、翌朝には大吉にされていた。妻はよくこういうことをする。余計なことをと思うが、同時に嬉しくもなる。
     少なくとも、私が引いたおみくじは凶などではなかったのだから。
     初詣になど興味なし。テキヤにて飯を買って参れ。とのたまった彼女がおみくじに加筆するなど予想外甚だしいが、思い返せば外れた馬券や宝くじも彼女なりのアタリにされてきた。
     それを思うと、そうおかしなことでもない気がしてくる。
     私の記念品である白紙のおみくじは消えてしまったが、代わりに暖かい宝物が増えた。後生大事にしていると、また妻にどやされるが、元はと言えば用意したくせにと悪態をつくことにしている。
     そうして二人でケラケラと笑うところまでがセットだ。
     我らが夫婦の日常である。
返信の受付は終了いたしました。