• 「小説を書くのって難しいよね」
     彼女は物憂げに呟いた。だが、こうしてセリフから書き始めると案外すんなり書き進められたりする。より小説っぽくするなら──。
    「──こうやって罫線を入れるのがいいね」
    「そうね……。あとは"……"を入れるのもオススメだわ」
     罫線や三点リーダーに頼るのもいいが、たとえば今やっているように字下げするとより"それっぽく"なる。ただし、字下げすると文字数が削られてしまうから諸刃の剣だ。あるいは、こうするのもいいだろう。……体言止め。
    「それよりも!や?の後に空白を入れるのもそれっぽくなると思うの、私」
    「今のは倒置法?」
    「ええ。倒置法と体言止め、この二つを使うと、なんとなく小説っぽくならない?」
     僕は頷き、コーヒーを飲む。通りに面した大きな窓ガラスから夕日が差し込んで目に眩しいくらいだ。だがらそれよりも眩しいのは──。
    「……小説書いったーがもっと賑わえばいいわね」
    そう、彼女の笑顔だ。
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