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「……っ!?」
突然の声にギョッとして、俺は文字通り跳び上がった。俺の背後に立っていたのは、見目のいい若い男だった。
染めた髪を片側だけ刈り込んだガラの悪そうな髪型だが、ただの黒いTシャツすらファッションのようにサマになっている。
ただ顔かたちはいいが、どこか異様だった。
やたらと大きい瞳は商店街の薄暗い光を吸収して、真っ黒の穴のようだ。
「なぁおい、タイツ探してんだろ?」
ピアスの穴だらけの顔がぐいと近づけられ、恐怖に思わずのけぞる。
「……!!」
一瞬であがった息を、俺は手のひらで無理に抑えつけた。
「たっ、ぁっ、タイツぅっ?なんのことでしょう」
他人の喉のように声が上ずる。
恥ずかしくて情けないが、仕方がない。こちとらコミュ障の陰キャなのだ。
「小銭おとっ、おとしたんですけど、無いみたいなんで…」
腰を上げて立ち去ろうとするが、床から動けない。
よく見ると、ピアス男のスニーカーが俺の服の裾を踏んでいる。
俺は自分の顔から、さぁと血の気が引くのを感じた。 -
「はは……は」
先の茶色い割り箸を投げ捨て、皮がすりむけて血の滲んた黒い手のひらを見つめる。
「ばかだよな。いつもこうだ」
いつも下らない事をやってばかり。田舎から出てきて大学生になったのに、都会にも大学にもうまく馴染めなくて、気づけば逃避のための麻雀漬けだった。
借金を返せばなんとかやり直せる、そんな甘い考え の世界一惨めな男の顔が、目の前の自販機のプラスチックのふたに映っている。
その時後ろで、じゃりと地面を踏む音がした。
「おい、お前もタイツ探してんのか」