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「おい、お前のそれっておっさんが履くにはずいぶん派手だよな。幻のタイツか?」
地面に膝をついたピアス男がぐいとワンピースの胸ぐらを掴み、おっさんの胸元がはだける。以外にもつるりとして色白な肌に、俺はかえってゲンナリとした。
ピアス男のやってることは野蛮だが、俺にはもうこのおかしな中年までかばってやるほどの体力も気力も残っていなかった。
「失礼な!あなたはおっさんが派手なタイツを履いたらいけないとでも言うんですか?!誰にでも好きな服を着る自由はあるはずでしょう!」
「……そうなのか?」
プリプリと怒る中年男に、ピアス男が珍しく戸惑ったような顔を浮かべてこちらに確認をしてくる。
「まぁ、そうっちゃそうですね。今は性別で服装制限するの、良くないって感じが社会的な常識になりつつありますし」
「へぇ〜。お前学あんのな。ま、とりあえずは確認のために写真撮らせろよ」 -
奥のゴミ捨て場になっているらしき小さな袋小路から、人の気配がする。
(ここまでで殆ど人に会わなかったのが、不幸中の幸いかな)
暗い袋小路にそっと足を踏み入れると、ピアス男の金髪の後ろ姿が見えた。その足元で、フリフリのミニスカート姿の誰かが腰を抜かしていて、その可哀想すぎる姿に罪悪感で押しつぶされそうになる。
「おい、もう……!」
やめろ、と言おうとして、俺は絶句した。
「よぉ、追いついたか。なぁこいつ何だと思う?」
こちらを振り向くピアス男の向こうから、目が離せない。
短く愛らしいスカートから伸びるタイツを纏った脚は、やたらと骨ばっていて筋肉質だ。
「な、な、何なんですかッ!あなたたちはッッ!」
つばを飛ばして抗議をするそのミニスカートの主の顔は、どう見ても60以上の年齢の男だった。