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「うわっ、タイツのおっさん!」
そこに仁王立ちしていたのは、相変わらずひらひらのワンピースに身を包んだ、あのファンシーな中年男だった。
タイツを奪われて生足なせいで、ビジュアルの破壊力が格段に上がっている。
「ええ、私がタイツのものです。夜は随分と失礼な事を言って下さいましたね」
じっとこっちを睨む中年男の視線が刺さって、俺はばつが悪かった。
「えっと……すみませんでした。俺のせいで警官にタイツとられちゃったみたいで……」
謝罪をすると、中年はゆっくりと顔を横にふった。
「あの虹色のタイツ自体は問題ではないんです。私 は一番大切なタイツを身につけておりますので。愚者には見えない本物のタイツです」
「えー、あー、そうすね。それは誇りこそがタイツとか、そういう隠喩的な……?」
「物よりも、大切なのは名誉です。あの不名誉な私への言葉は、あなたの本心ですか?」 -
徹夜でおかしくなったテンションのまま公園の自販機横のゴミ箱をあさる俺の横を、出勤するサラリーマンや学生が通りすがってゆく。
「……」
忙しい平日の朝、人々はこんな俺にも何かを言いはしない。視線が一瞬ちらりとこちらを向く事には気づいていたが、今更だ。
(みじめだとか、俺何やってんだろうとか……そんな気分はこちとら毎日なんだよ)
どのみち普段からろくでもない生活だ。昼起きて、飯のためだけに仕方なく外に出る。
何かに金を賭けている時だけは、そのだめな自分を忘れられた。
「……くそっ。こんな所に捨ててあるわけ無いよなっ!」
イライラして調べかけのゴミ箱を蹴飛ばすと、ガラガラと音を立てて散乱するペットボトルの向こうに立ち尽くす誰かが見えた。