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まっすぐに問うてくる瞳に、俺は頭を掻いた。
「いえ。職質が面倒で、警官の注目をなすりつけたくて言いました。タイツはまぁ、その、履きたい人が履けばいい……と思います」
「その通りですね。分かって頂ければ結構です。では」
おっさんは、深くうなずくと踵を返して颯爽と去っていった。
風でそよいだミニスカートの裾からは、ちらりと【タイツ】の文字が覗いて見えた。
「タトゥーでタイツって入れるって、どんだけタイツ好きなんだよ……」
俺はひっくり返ったゴミ箱を起こして、ため息をついた。 -
そこに仁王立ちしていたのは、相変わらずひらひらのワンピースに身を包んだ、あのファンシーな中年男だった。
タイツを奪われて生足なせいで、ビジュアルの破壊力が格段に上がっている。
「ええ、私がタイツのものです。夜は随分と失礼な事を言って下さいましたね」
じっとこっちを睨む中年男の視線が刺さって、俺はばつが悪かった。
「えっと……すみませんでした。俺のせいで警官にタイツとられちゃったみたいで……」
謝罪をすると、中年はゆっくりと顔を横にふった。
「あの虹色のタイツ自体は問題ではないんです。私 は一番大切なタイツを身につけておりますので。愚者には見えない本物のタイツです」
「えー、あー、そうすね。それは誇りこそがタイツとか、そういう隠喩的な……?」
「物よりも、大切なのは名誉です。あの不名誉な私への言葉は、あなたの本心ですか?」