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「んっ、むっ、むっ……。ぷはっ!!」
口をつけると、それは存外美味かった。
疲れていたせいもあってか、俺は普段苦手な甘いドリンクを一気に半分も飲み干してしまう。
ピアス男はほらとでも言わんばかりに、片頬をあげて俺の様子を見ている。
「うめーだろ?」
「……うん。ありがとな」
「はは!お前素直に礼とか謝罪とかできないタイプかと思ってたわ」
うっすら心当たりのある欠点を示す言葉に、ぎくりとした。
確かにピアス男に踏み倒されたパフェはこれの数倍の値段で、いつもならそんな状況で礼など絶対に言わないだろう。むしろ金返せだ。
だが、何故か今は素直にそんな言葉が口から出た。
久々の朝の空の下で、口の中をしゅわしゅわと泡が撫でる。
それは腐った毎日の中で俺の中で凝り固まってしまったヘドロのような何かを、洗い流してくれているように感じられた。 -
目の下にくまを作ったピアス男が、不健康な顔色で尋ねてくるのをじろりと見返してやった。
寝不足の不機嫌もあって、俺はもうだいぶん前からこいつに気をつかってビクビクするのをやめている。
赤の他人に適当な態度を取っても、案外怒られないものなんだなと気がついたのだ。
「あるように見えんの?」
「はは、見えねぇ〜。ちょっと回復すっかぁ」
男は手に下げたビニールから、ペットボトルを出して手渡してきた。緑のラベルの、馴染みのない海外の炭酸ジュースだった。
「なんか……凄い甘そうだな」
「おぅ!昨日パフェ奢ってもらったしな、俺が買ってきたけど気にせず飲めよ」
「いや奢ってねぇ……」
千円近いパフェとペットボトル飲料じゃ釣り合いが取れないが、どうやら金を返す気は無いらしい。
納得がいかないながらもプシュとキャップを開くと、爽やかな香りが広がった。