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男はジュースを飲み干すと、ゴミ箱を起こしてそこにペットボトルをがこんと捨てて言った。
「でも、ゴミ箱は本気でいいセンだと思ったんだけどなぁ。タイムリミットの頃って、この地区はちょうどペットボトルのゴミ収集車が来る時間帯だろ?」
「え?回収ってそんな時間だっけ?まぁでもここらのゴミ箱はあらかた見たし……ん?」
自分でまき散らしたペットボトルを片付けていると、投げ入れたボトルが何か硬いものに当たったような、からりというやけに高い音がした。
手を突っ込んで拾い上げると、それは切れ込みの入ったすすけた木札のようなものだった。
「なんだこれ……どっかの靴箱の鍵か?」
「ん〜?何でこんなとこに一個だけあんだ?……あ」
「え?まさか、これが?」 -
口をつけると、それは存外美味かった。
疲れていたせいもあってか、俺は普段苦手な甘いドリンクを一気に半分も飲み干してしまう。
ピアス男はほらとでも言わんばかりに、片頬をあげて俺の様子を見ている。
「うめーだろ?」
「……うん。ありがとな」
「はは!お前素直に礼とか謝罪とかできないタイプかと思ってたわ」
うっすら心当たりのある欠点を示す言葉に、ぎくりとした。
確かにピアス男に踏み倒されたパフェはこれの数倍の値段で、いつもならそんな状況で礼など絶対に言わないだろう。むしろ金返せだ。
だが、何故か今は素直にそんな言葉が口から出た。
久々の朝の空の下で、口の中をしゅわしゅわと泡が撫でる。
それは腐った毎日の中で俺の中で凝り固まってしまったヘドロのような何かを、洗い流してくれているように感じられた。