返信の受付は終了いたしました。
-
-
- 読み込み中...
そのたった一つの事を思い出したとき、頭の中で何かがぱたぱたと繋がったような気がした。
「あのおっさん。あの虹色のタイツのおっさん……!数年前までこの近くでやってた、銭湯のおっさんと同じ顔だ」
風呂なしアパートに住んでいるおかげで当時は通っていた場所なのに、すっかり忘れていた。
忘れていたというか、前の硬派な職人のような佇まいに比べるとあまりにも服装のインパクトが強すぎたせいとも言える。
「銭湯?あぁ、そーいやあったな!俺は入れねえからよく知らないけど」
「お、おう。やっぱ脱いだらお絵描きだらけなの?」
「へっへへ」
俺たちは目を見合わせると、うなずき合って足を踏み出した。 -
木札には、薄くなってはいるが黒く太い文字で「イー4」番と書かれている。
和風のファミレス、昔ながらの蕎麦屋、この手の靴箱がありそうなところは色々と思い当たるが、昼営業からの飲食店はまだ開いていない時間だった。
「おい、飲食店はどこも11時からだ。ここは一旦待って出直そう」
スマホで調べた情報を伝えると、ピアス男は息を切らせながら汗をぬぐって顔をしかめた。
「だめだ、11時すぎたら、タイムリミットが来る。店に入れた時点でゲームオーバーだ」
「はぁ?!昨日の深夜から数えて24時間ぐらいあるんじゃなかったのかよ?!」
「24時間も無いって言ったろ」
「12時間もないって言えよ!!」
隣町に新しく出来たスーパー銭湯で風呂にでも入って来ようと思ったのに、11時までならあと一時間も無い。
その時、脳裏で何かが閃いた気がした。
「そうか。銭湯、だ……」