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「どうも、おつかれさんです」
その声と眼鏡には、しっかりと覚えがあった。
「あれ、確かタクシーの?」
「へへ、俺が呼んだんだ。関係者だったみたいだから」
タトゥー男がにやりと笑って、メニューのタッチパネルを渡す。運転手の頼んだ山盛りのパスタがやってきたときには、俺たち3人はすっかり話し込んでいた。
「じゃあ、アプリやなんかを作ったのは運転手さんだったんすか?」
「ええまあ、私もあの人も、ここらで育った昔馴染でね。小さな子供のころからあの銭湯には連れてかれてましたから、そのよしみで。幸い私はその方面では小器用でしたし」
「じゃあ、タクシーで客に話を広めてたのは……」
「亡くなった奥さんはそりゃあ素敵な人でしたからね〜。あの人の大事にしてたものをこの町の皆の宝にしたいなんて、ロマンがあって手伝いたくなるじゃないですか」
パスタを口いっぱいに頬張ってうっとりとする運転手に、そんなもんかなと不思議に思う。
「結局、人間は愛ですよ、愛。例え相手が何でもね」 -
「おう!完璧!」
いつかのファミレスで、俺らはあの席に座っていた。あいつの前にはチョコバナナパフェ、俺の前にはコーヒーだ。
「でも本当に分け前あの値段で良かったのかよ。借金返したら殆ど無くなるんじゃねーの」
「……まぁ、色々考えたけどこれでいい。余計に金があったら俺はまたろくでもないことしそうだからな」
「ふ〜ん、そっか」
目を伏せてアイスを拭うその姿は変わらないが、今ではこいつの目がイッてるなんて思わない。
顔が整ってて目つきが整ってないだけの、ただの好青年だった。
「お前だって、自分のスタジオ持つんだろ?準備は進んでんのかよ」
「おう。アパートの一室かなんかで考えてたけど、金があるからけっこういい店持てそうだ」
ピアス男……ではなくタトゥー男は、そう行ってはにかんで笑う。
その時二人だけだったボックス席に、ぼすりと誰がが座ってきた。