•  一体いつから僕らの悪夢は始まったのだろう。いつからどこから、残酷な運命が真っ黒な線引をして僕らと世界を隔てたのか。
     薄暗い部屋の中、眠ることのない君はじっと月を眺めていた。同じになれなくてごめんねと口の中で呟くと、赤い目がこちらへ向けられた。なんでもないよと微笑んで僕はそっと目を閉じる。悪夢の中で見る夢は案外優しく甘いばかりで、君と一緒にここで暮らしていきたいだなんて、今夜も取り留めのない願いを胸に抱く。
     いつか、どうか。
     悪夢の先で君と笑い合えたなら。もうそれだけで僕らの全てが報われる。そうして僕は、この命を喜び勇んで投げ出すことさえ出来るんだ。