• 私は家系は代々錬金術を受け継いでいる。

    錬金術の発祥は古く、その歴史は紀元前にまで遡る。しかし一時期は隆盛を極めたものの、時代が変わるにつれ科学が発展し、錬金術は廃れていった。

    しかしそれは表向きの話だ。
    裏では子々孫々、連綿と受け継がれている。
    表沙汰にはなっていないが、戦争や政治に利用されてきた過去もある。
    それは現在も同じかもしれない。 

    かも、なんて何故こんな曖昧な言い方をするかというと、私は錬金術を悪用する連中とは早々に縁を切ったからだ。
    そんなものに使ったって面白くない。

    何より私には夢がある。
    山奥に身を隠し、ひとりで細々と研究を続けて数十年。
    遂に念願が叶おうとしていた。

    「成功だ!遂に完成したぞ!」
    私が錬成したもの。それは美女の身体。
    文字通り、造りもののように美しい女が目の前にいた。
    「後はここに私の魂を移すだけだ」

    そう。
    私は美女になりたかったのだ。

    今年で58歳になる中年男性の私は、今日この時をもって密かに絶世の美女へと転身した。