• 珍妙な形をした地蔵が並んでいた。蝉時雨、田舎道、無職のおれは足を止めた。集落に他人の気配はなく、ヒマワリだけが咲き誇っている。おれは珍妙な形をした地蔵に話しかけた。
    「そんなに珍妙な形をしていると、おまわりさんに捕まっちまうよ」
    地蔵は応えた。
    「私の存在はかくあるべしと命ぜられてからこのかたこの形だ。今どきの官憲などになにか言われる謂れはない」
    おれは納得して、珍妙な形をした地蔵に百円玉を奉じて頭を下げた。地蔵は夏空にますますそり返り、この世のどの仏よりも偉大に思えた。
    おれは日焼けした夏の少女の幻影を見ながら、ありもしない集落の中心に向かって歩みを進めた。ただ、蝉だけが、鳴いていた。