• 即興のバイオリン、タンバリン、マンドリン。音と音とが重なりあい、響きあい、弾きあった。音楽のなかに僕はいて、僕の中に音楽はあった。みなは踊り狂い、狂気のなかに踊りはあった。僕は僕のソプラノリコーダーを吹きまくり、音は外れて宇宙に飛び去った。飛び去った音は音速を超えた。遠くエウロパまで届いたその音に、彼らもまた反応した。彼らは微弱な電波をこの地球に送り返した。
    「コンニチハ、コンニチハ、ゴキゲンデスネ」
    その電波が届くころには、僕らはみんな年老いて安楽椅子に座っていた。手を伸ばしても届くのは月。月光楽団が今宵もすてきなメロディを奏でる。僕らは少しだけ身を揺らす。