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知識によって破壊される幻想を書きました -
海中を思わせる薄暗い館内に大きな水槽。私は水族館を訪れていた。
近年は海月が密かに人気を集めている。
丸みを帯びた優しげなフォルムに、透き通る体。揺蕩うように海中を泳ぐ姿はさなかがら海の妖精のようだ。
水族館側も海月の幻想的な魅力を理解している。照明は青や白だけなく紫や桃色といった多様な色彩でライトアップし、美しい雰囲気作りに注力している。
私は見惚れるように水槽に吸い寄せられる。
海月は私のすぐ目の前を通り過ぎた。
ゆらゆらと伸びる長い触手。
透明な傘の内側は無数の触手が蠢いている。
思わず目を背けた。
じっと見ていると少し怖い。
水槽の脇にある解説文に目を通す。
脳も心臓も無い。血も通っていない。
代わりに全身に神経が張り巡らされているそうだ。傘の躍動は栄養を巡らせるための運動に過ぎない。
水槽に目を戻す。
そこにはグロテスクな触手を揺らす海月が、怪しく傘を蠢かし、青や紫のライトに照らされながら不気味に漂っていた。