• 向日葵が一輪咲いている。
    梅雨のはじめだというのに。

    僕の家の側に空き地がある。元は田圃だったのだろうが今は放置されて草だらけだ。

    しかし誰が植えているのか、夏は向日葵が咲き秋はコスモスが咲く。
    毎年随分と綺麗に咲くものだから、側を通る時にはつい目を奪われてしまう。

    今は6月。ジメジメとした梅雨の季節。
    空き地の向日葵達は茎を伸ばし葉をつけて、静かに夏の訪れを待っている。

    そんな中、一輪だけ既に立派な花を咲かせていた。

    僕は思わずその向日葵に釘付けになる。
    他と少し離れた場所に咲いていた。
    太陽のような明るい顔で、ひとりじっと曇天を見上げている。

    これから本格的に梅雨入りだ。
    向日葵を見てこんなに寂しい気持ちになるのは初めてだ。
    向日葵に憂鬱な雨は似合わない。夏の眩しい太陽こそが似合う。

    「大変な時に咲いてしまったな」
    僕は儚い気持ちになり、心の中でそっとエールを送った。
    早咲きの向日葵が梅雨の重さに負けず懸命にに咲く──その姿をさいごまで見届けようと決めた。
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  • スレ主(xVkDIV)2022年6月12日
    近くの空き地に本当に咲いています。
    夏に何本もの向日葵が満開になる様も美しいですが、こんな雨模様の空の下一輪だけ咲く様も、明るさの中に物悲しさが入り混じっていて非常に美しく思い、その景色を表現してみました。
    向日葵といえば力強く元気なイメージがありますが、こんな儚い表情も見せるのかと感心しました。こういう言語化し辛い切なさを、エモいと言うのでしょうね。
  • 一輪だけ咲いている向日葵…なんだか物悲しいですがとても美しい情景だなと思いました。美しい風景を教えてくださってありがとうございます。
  • スレ主(xVkDIV)2022年6月12日
    返信先: @b6rvTHさん 感想ありがとうございます…!励みになります!
    梅雨の向日葵もいいものですね!