•  漫画喫茶の片隅、私は濁った目で背中を丸め、カップ麺をすすっていた。

     コツコツと靴を鳴らし、真っ黒なスーツを着た老人が歩いてくる。老人は大柄で目つきの悪い男を従え、突然私のいる個室へ入ってきた。

     私はろくに抵抗もできず、怪しげな薬を嗅がされぐったりとする。大柄な男が私を肩に担ぐと、老人と男はそのまま漫喫の出口まで来て店員の男に小さく頷いていた。どうやら店員もグルのようだ。

     次に私が目覚めたのは、どこかも分からぬ田舎の一軒家であった。訳もわからぬまま農家での暮らしが始まり、脱走してもすぐに大男に捕まってしまう。ここには何人もの人々が私と同じように捕まっていた。
     修行という名の洗脳を終えた者は黒いスーツで「仲間」を増やす為に奔走する。黒い手袋をしたその手に握られた数十枚のビラには同じ文言が書かれていた。

    『サンタクロース養成所。夏はブラックサンタとして新人発掘を行なっています。アットホームな会社です♪やりがいのある職場です。』