• ハロルドはいいやつだった。ときどきデリカシーのないことをするけれど、心底嫌われるようなことはしなかった。女にももてたし、男連中もすぐに仲間になった。ハロルドはそんなやつだった。そんなハロルドが、ご自慢のバイクで砂漠を渡ると言ってから、二年経つ。酒場ではたまにハロルドのことが話題になるが、すべて昔話のように聞こえた。ハロルドは存在してたのだろうか。ぼくらが青春というものに抱く幻想に過ぎなかったのではないか。バーボンを飲みながら、たまにそんなことを考える。今夜もハロルドは戻らない。