寝室に入る夜風は涼やかで秋の気配をかすかに感ずる

赤トンボ一匹私の前を飛ぶ夏の終わりの夕暮れの道

プロ野球 ペナントレース 激戦で
マジック点けば 秋のおとずれ

文房具売り場のペンの試し書き あああああああああ断末魔

几帳面な人なのだろうベランダに等間隔に干されたTシャツ

雄弁は銀というけど君と会う日の口先は銀に輝く

言葉にてやりとり交わしすぎる日もあなたに会えずさみしいさみしい

きらきらと月のひかりを受け止めてきみのまぶたに銀河が宿る

水水水半分以上が水なんてきゅうりみたいだねヒトのからだは

喧嘩して疎遠になった友達の顔によく似た千手観音

カステラをかすていらって呼んでみる雨の土曜はそういう気分

あっ、どうも。あっの数だけ距離が開く僕を眺めて猫は伸びする

ティーカップの底に残った茶葉だとかサラダのパインに目を向けていたい

平和とか人権標語のために詠む短歌はどうもつまらなくなる

破れてるパンツを捨てて履き替えて
履いたパンツも穴が空いてた

どちらかに決めたくなくてカフェオレの曖昧という優しさを飲む

休日の午後に降りだすにわか雨舌で転がすレモンキャンディー

食べ過ぎて たぬきのような このお腹
後悔しつつ パンシロン飲む

水不足　おそれた夏は過ぎていき　残る暑さと土砂降りの雨

無知は罪けれど知恵なく罪深きわれの行く末地獄なりけり