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塚原くんは紙片に顔を向けたまま、
個人性質は異なりがあるならば、手本は手本を生み出した者に最良だからではと、サラリと応えた。
塚原くんは天才だ。塚原くんはそれを気に留めもしない。心配は、周りの子どもはしだいに奇妙な生物を見る目で嫌厭しはじめることだ。
彼はそれさえも知っている。いや、自覚はない。
赤色ダイヤ以後、才能に目を留めた彼の叔父がまわりをうろつく。大人たちはやっきになっている。父君は喜々としているようだ。
数日して、塚原くんが僕に話した。迷子の僕は霧が晴れた。彼はお礼だという。楽しい世界を見せてくれたと非常に喜び、爽やかな笑顔で。
小さな時に興味本位でしたことが、偶然大人の目にとまることはある。類まれな科学の発見が、長年の研究と努力と引換に降臨をしたならば、世界はもっと平和だったかもしれない。
僕は、彼に教えねばならないことを悟った。凡人には親しくても何年しても大人でも、例えば親切にされて有難くても、嫉妬があることを。
大野 -
礼儀正しい塚原くんは、汚さないから紙片を手にとり見せてほしいとねだってきた。彼の興味は知識そのものだ。初めて見る単語、数字、異国の言葉にはしゃぐ塚原くん。彼にとって遊びなのだ。
質問に疲れたので辞典をわたし、使い方を教えると非常に喜んだ。彼にとって新しい玩具なのだろう。
統計にはコツがある。大学で基礎を知り高校で基本は訓練済みだ。しかし僕にはコツがつかめない。何年しても難しい。
塚原くんもこれから経験するだろう。眼の前の希望に手が届かない歯がゆさ、才能の限界、現実を突きつけられた絶望感。乗り越え中だと僕は愚痴をこぼした。
大野