返信の受付は終了いたしました。
-
-
- 読み込み中...
私の言葉に彼は更に顔をしかめる。眉間にシワを寄せ、唇を噛み締める表情は、まるで十字架にかけられたキリストだ。気の毒になるくらい辛そうな面持ちを横目に私は呟く。
「どうせバレないだろ。面白おかしく嘘を書いて都市伝説にしたらどうだ?口裂け女とか人面犬みたいに」
「嘘を書くったって、お前……」
彼はテーブルに目を落とす。しばらく考え込むように俯いていたが、ぱっと顔を上げて私の顔を見つめる。
「……なぁ、色んな都市伝説を混ぜりゃバレないよな?口裂け女に人面犬、きさらぎ駅に鮫島事件…全部ごちゃまぜにすりゃ…」
「お前の書き方次第だな」
私は空になったグラスを持ち上げ、取り残された氷を口に放り込み、ボリボリと噛み砕きながら彼に向かって微笑む。
「あれこれ書いて、こう締めくくればいい。『記者の消息は不明。彼の部屋に残された書きかけの記事をなんとか完成させました』って」 -
-
-
- 読み込み中...
彼は笑う。この顔。そうだ、新聞部部長の顔。取材下手なくせ徹底的に書き上げないと気が済まない記者の顔。高校の七不思議調査のため、二人で深夜に校舎へ忍び込んで、警備員のおっさんにこっぴどく怒られたっけ。
私はネクタイを緩めて言葉を続ける。
「手伝うよ」
彼は笑う。懐かしい笑顔で。 -
-
-
- 読み込み中...
注意書きのところに420字以内って書いてるのに今気がついた…ごめんなさい…。 -
「そう」
彼はストロー…もちろん流行りの紙製…でアイスコーヒーをかき混ぜながらぼやく。
「ちくわ大明神ってネタは知ってるだろ?あれの亜種みたいでな、出処を調べて記事にしろって……。いくら俺が底辺ライターだからって、そんなわけわかんねぇ仕事よこすなっての」
彼はストローから手を離すとびっしょりと汗をかいたグラスを握る。氷はとっくに溶けきり、コーヒーはもはや水同然に薄まっているだろう。彼は更に言葉を続ける。
「まあ、一応調べたよ。Ttersってサイトで一瞬だけ流行ったネタだってことがわかった。でもそれだけだ。記事になんかできねぇよ……」
勢いをつけて飲み下すと、彼は顔をしかめて窓の外を見つめる。私もそれにつられて外を見る。大雨の中、子供の手を引く母親がバス停へと急ぎ足で駆けていく。
「──捏造したらどうだ?」