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彼は笑う。この顔。そうだ、新聞部部長の顔。取材下手なくせ徹底的に書き上げないと気が済まない記者の顔。高校の七不思議調査のため、二人で深夜に校舎へ忍び込んで、警備員のおっさんにこっぴどく怒られたっけ。
私はネクタイを緩めて言葉を続ける。
「手伝うよ」
彼は笑う。懐かしい笑顔で。 -
「どうせバレないだろ。面白おかしく嘘を書いて都市伝説にしたらどうだ?口裂け女とか人面犬みたいに」
「嘘を書くったって、お前……」
彼はテーブルに目を落とす。しばらく考え込むように俯いていたが、ぱっと顔を上げて私の顔を見つめる。
「……なぁ、色んな都市伝説を混ぜりゃバレないよな?口裂け女に人面犬、きさらぎ駅に鮫島事件…全部ごちゃまぜにすりゃ…」
「お前の書き方次第だな」
私は空になったグラスを持ち上げ、取り残された氷を口に放り込み、ボリボリと噛み砕きながら彼に向かって微笑む。
「あれこれ書いて、こう締めくくればいい。『記者の消息は不明。彼の部屋に残された書きかけの記事をなんとか完成させました』って」