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「おい!!」
「うぉぉ〜まじかぁ」
俺たちは銭湯の靴箱の前で座り込んだまま、子供のように互いの肩をつかんで揺らした。
笑いがこみ上げる中で、自然と目を見合わせる。
「お、お前開けろよ。タトゥーの全貌覚えてたのはお前だし」
「じゃあせーので開ける」
俺たちは片手を金庫のふたにそえて、声を揃えた。
「……せーのっ」
ぱかと開いた金庫には、くたびれたボロボロのタイツが入っていた。
「出してみるぞ」
「これ……灰色、か?灰色は外れじゃなかったのか?」
「とりあえず撮る」
薄暗い銭湯でピントを合わせるのを待っている間、俺は何かに気づいていて体を硬直させた。
この建物には、俺たち以外に誰かいる。
シャッター音の合間に、確実に床のきしむ音が聞こえたのだ。
ピアス男に伝えようと声を出す直前、その誰かの声が響いた。
「それはね、白タイツなんです」 -
「俺、タトゥースタジオで働いてるから。若者向けの店なんだけど、結構なおっさんが来て担当したから覚えてんだよね」
「そうだったのか?!で、何て書いてた?!」
「あれってタイツじゃなかった。タイツチョウ、だ。4文字どころか6文字になっちったなぁ」
やっぱだめか、とつぶやくピアス男の横で、俺はひとり興奮して手を震わせていた。
「バカ、タイツじゃなくて田井津町だろ?!井戸の井が4なら、絶対画数だろ!」
「カクスウ?」
「見てろ!まず田んぼの田が、5!んで、井が4!」
宙に指先で文字を書くようにして画数を数え、ダイヤルをその数字に合わせる。
興奮する俺の隣で、ピアス男がようやく合点がいったかというようにあぁ、とつぶやく。
「津は9だな」
「9……と。で、最後が町の……7か!」
その数字を入れた途端、金庫の蓋からカチリと小気味のいい音が響いた。