• いいや、違う。諦めてどうする。また流されるまま生きるのか? 慎ましくも平和な時間はもう過去だ。ならば新しい景色に相応しい新たな自分を見つけることこそが走る意味ではなかったのか?
    ババアは膝を曲げる。走る速度を下げるのではなく更なる加速を求めて一瞬の邂逅。伸ばした腕でやわらかな体を抱き抱えた。懐かしい甘い匂いがする毛並みを胸に抱き締めて、頰からぽたぽた落ちるのはあのタレではないがとても意味のあるしずくだった。焼けたアスファルトに落ちる水滴。今度のぽたぽた焼きは醤油や砂糖の甘さではなく、少し塩辛い味がした。
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