あしひきの　山はなくもが　月見れば　同じき里を　心隔てつ

新しき年の初めの初春の 今日降る雪のいやしけ吉事

新しき　年のはじめに　かくしこそ　千歳をかねて　楽しきをつめ

中々に人とあらずは酒壺に なりてしかも酒に染みなむ

月清み 瀬々の網代に寄る氷魚は 玉藻にさゆる氷なりけり

田子の浦ゆうち出でて見れば真白にそ富士の高嶺に雪は降りける

み空行く 雲にもがもな 今日行きて 妹に言どひ 明日帰り来む

山里の草のいほりに来てみれば垣根に残るつはぶきの花

大空の　月のひかりし　きよけれは　影見し水そ　まつこほりける

男もすなるといふ日記を女もしてみむとしてすなり

銀河沙漲る三千里

ひいふっとぞ射切ったる

雪月花の時　最も君を憶ふ

吾妹子がいかに思へかぬばたまの一夜も落ちず夢にし見ゆる

白玉か何ぞと人の問ひし時露と答へて消えなましものを

明けゆくや二十七夜も三日の月

その原やふせやに生ふる帚木のありとは見えて逢はぬ君かな

君を思えども見えず 渝州に下る

萩が花ま袖にかけて高円の尾上の宮に比礼ふるやたれ

君により思ひならひぬ世の中の人はこれを恋というらむ