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ドレスの少女はわずかにたじろいだ様子を見せ、ひと声叫び声をあげるとその場からかき消えた。
言葉では無かったのに、「悲しい」「もう十分だ」と強く感じずにはいられない声だった。
何も感じていなさそうだったのは、表情だけだったのだろうか。
草を踏む音に意識が現実に引き寄せられる。
フクロウの冠がきらめき、猛禽類独特の歩みで自分たちに近づいてきて嘴を開く。
「ふたりとも、大丈夫かホー?」
緊張をまるごとほどけさせる、かわいらしい声だった。
ソランは思わず頬が緩む。
「うん、おいらは大丈夫っポン。シャランちゃんが助けてくれたし、あなたにも助けてもらったから」
「そっか、ならよかったホー」
冠を落とすことなく器用に頷く。
「ところで、キミたちはさっきの子を知ってるかホー?」
すっとこちらを見て、威厳ある見た目でかわいい声が質問を投げかけた。
「いいえ、知らないっポン。光の世界にあんな魂がいるなんて、信じられない」
今度はシャランが答える。続きを読む-
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「ほんとそうっポン。フクロウさんはさっきの女の子の事知ってるっポン?」
ソランは期待を込めてそのフクロウに声をかける。フクロウは森を背に二人を猛禽の鋭い眼光で見つめて、
「知ってるホー。怖い思いをさせて申し訳なかったホー、今は安全だから、二人とももう家に帰った方がいいっホー」
可愛い声で答える。
ソランは立ち上がって自分からもフクロウに近づいた。ついでに土や草も払う。
「でも、あんな魂が居たらみんな安心して光の世界で暮らせないっポン!ねえシャランちゃん!?」
「えっ!!? うん、そうだと思うポン・・・でも」
シャランもゆっくり立ち上がって同じように草を払った。
「私達にできることなんて、ないんじゃ」-
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そうなのだ。今二人が生きているのはこのフクロウが間一髪光る円で少女の攻撃を防いでくれたからで、あれがなければ自分たちはどちらも消えてしまっていたかもしれない。
フクロウは上手い事瞼を動かして笑顔を作った。
「そこの金髪のお嬢さんの言う通りホー。青髪のお嬢さんにもできることは何もないホ。あの子はこっちでなんとかするホー」 -
全身の物理的な衝撃と土と強い草の匂いで、飛びついた勢いで別の草むらに二人まとめて転がったことは分かった。
「シャランちゃん!あれ・・・」
目を開け、まっさきに見えたのは自分たちを守るように浮かぶ不思議な模様を描いて光る円だった。静止してはおらず、かすかに揺らめく。
ついでソランの指さす方向を見る。
草原の、自分たちが布を敷いていたあたりに一羽のフクロウがいた。
頭上には金色の冠を頂き、先端が湾曲した杖を持つその姿はまさに森の賢者と呼ばれるにふさわしい風格を具えている。
その杖はまっすぐこちらに向けられていて、自分たちと少女の間の光る円の揺らめきが同期していることで不可視のつながりがあると知れた。
光る円は鈴のような高い音を発して消えた。森から現れたフクロウはその猛禽の瞳で黒いドレスの少女を睨みつける。