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葬儀も終盤になり、とうとう出棺前の最後のお別れになり、お花を棺に入れていく。
「あんたが孫の中では一番可愛がられていたから、お祖母ちゃんが見られるように顔の近くにお花を入れてあげて」と母に勧められ、祖母の顔に近づいたところでやっと気付いた。
綺麗に死化粧の施された祖母の、薔薇色の、唇。
祖母が一番大好きだった色は、納棺師の方によって、ちゃんとそこにあった。
数年前伯母が祖母より先に逝ってしまった時に伯母が生前使っていた化粧品を使って死化粧をしてもらった時に、納棺師の方が手を尽くして下さっても口紅の色が上手く出なかったのに。 -
金魚草、ガーベラ、百合、どれも可愛らしい雰囲気の祖母に似合うけれど、祖母が一番好きだった色だけがなかった。
泣き虫でよく祖母に縋りついて泣いた私を、「千枝ちゃん、また兎さんのお目々になってるわよ。ほら、お祖母ちゃんが大好きなお花を一緒に見ようね」と連れ出してくれた時に見ていた、あの色だけがなかった。