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火葬場で「私はお祖母ちゃんをちゃんと送ってあげられたのかな。私が避けていてろくに話もしなかったけど、もっといいやり方があったんじゃ」と泣きじゃくる母を慰め、初七日を済ませ、新幹線で一人暮らしの自宅に帰って年を越した。
今年のカレンダーの一枚目を捲り、私の誕生日の翌日に丸をされた祖母の誕生日と一月の薔薇の花束の写真が見えたらもうダメだった。
母の気持ちを良く知っているから私はどういう気持ちでいればいいのか分からなかったけど、つやつやの薔薇色の爪と頬と唇とあったかい手を持った祖母は、もう二度と春を迎えてあんなに似合っていた薔薇色を見ることがないんだと思うと、やっとちゃんと悼むことができた。
「千枝ちゃん、兎さんのお目々ね。」と、あの日の声が聞こえた気がした。 -
「あんたが孫の中では一番可愛がられていたから、お祖母ちゃんが見られるように顔の近くにお花を入れてあげて」と母に勧められ、祖母の顔に近づいたところでやっと気付いた。
綺麗に死化粧の施された祖母の、薔薇色の、唇。
祖母が一番大好きだった色は、納棺師の方によって、ちゃんとそこにあった。
数年前伯母が祖母より先に逝ってしまった時に伯母が生前使っていた化粧品を使って死化粧をしてもらった時に、納棺師の方が手を尽くして下さっても口紅の色が上手く出なかったのに。