しりとりで小説作ったー

2022年7月9日に作成 #ネタ
しりとりで小説を作りましょう!
多少話に整合性が取れなくても大丈夫!気軽にどうぞ!

NGは中傷など倫理に悖るもの
その他しりとりのルールに則っていないものや、単語のみもNGです
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  • 息も絶え絶えに「空を飛ぶのは初めてだろう?だってのに、第一声がそれなのか?……お人好しだな、本当に」と笑う翼人。明るく振る舞っているが、どう見ても無理をしている。もしかして、シオンを安心させようとしているのだろうか……。
  • ヘリオトロープ色の胸元のリボンが風でヒラヒラと揺れる。シオンのお気に入りのリボンだ。
    「怪我…大丈夫……?わたし、救急セット持ってきたから、手当したい…」
    この人は本当につらそうだ。少しでも羽の生えた人の痛みを和らげたい。
  • 「くっ!」と後退するゼノ。その隙をついて、翼人がシオンの身体を抱きかかえた。
    「きゃっ……!?」
    「そのまま掴まっていてくれ、嬢ちゃん!」
    翼人は痛みに顔を歪めながらも、全力で走り出し──そして、飛んだ。空へ。
  • 意を決してシオンはゼノに体当たりをする。
    (きっと、わたしが攻撃すると思ってないはず。だから、不意はつけたと思う…)
    彼女の行動に翼人は驚く。
  • 「……大した兄ちゃんだよ。勿論、悪い意味でな」と翼人。その身体は今にも倒れそうなほどぐらついている。笑みを浮かべるゼノ。
    「怪我が悪化しているみたいだね。そんな身体で僕と闘うつもりかい?」
  • たしかに、そこにいたのはゼノだった。しかし、そんな視線を気にすることもなく、彼は刀を抜いていた。高度非殺傷刀、この片隅の世界でも、持つものが限られた武器。実際に使われることはほとんどない。シオンですら、ゼノがそれを抜くのを初めて見た。一瞬、体が動かなくなった。
  • 「いいから早くシオンをこっちに返して」とゼノは冷たく言った。
    自分が惚れていた彼は、どこへ行ってしまったのだろうか。今の彼は怖い。何かにとり憑かれていると言っても過言ではない。
    シオンは不安げにゼノの様子を見た。
  • 「ルックスは百点満点だが、女性の扱いは最低みたいだな。……兄ちゃん」
    森の中から飛び出してきた翼人が、ゼノの腕を掴みながらそう言った。そのまま、シオンと自身の傷口を庇うように立ち塞がる。
    「本来なら俺が関わるべきではないんだろうが……助けを求められたんだ、さすがに黙ってはいられない」
  • 「助けて…!」
    声の主はあの羽の生えた人と確信したシオンは、力を振り絞って叫ぶ。
    「シオンのしようとしてる事、毎回叶えてきた。でも、これは駄目だ…!屋敷に戻ろう」
    ぬっとゼノの手がシオンの腕を掴もうとする。
  • 前には暗闇、後ろにはゼノ。逃げるような体力も残っていない。どうすることもできず、シオンはルビーの指輪をギュッと握り締める。その時──
    「嬢ちゃん。……嬢ちゃん、聞こえるか?」
    ──森の中から、聞き覚えのある声がした。
  • 立ち止まって、ふとルビーの指輪を見る。
    あの輝きはもうなく、普通の宝石のように思えた。
    コツ、コツ、コツ――。
    足音だ。このままではすぐに追いつかれてしまう。
  • のんびりとした足取りで歩くシオン。
    まさか、自分がゼノから逃げ切れるとは思わなかった。
  • 素早く階段を降り、玄関の扉を開き、そのまま外へ駆け出した。辺りは既に暗くなっている。だが、シオンは足を止めない。──どれくらい走っただろうか。ふと、後ろを振り返ると、そこには誰も居なかった。
    「……逃げきれた……の……?」
  • うまく行くか分からないけど、この隙に逃げよう…。
    シオンは廊下をパタパタと走り出す。
  • す、とゼノは彼女に伸ばしかけていた手を降ろすと、やがてたまらないと言ったように笑い始めた。
    「ククッ、クハハハハハッ!」
    狂ったような、普段の彼からは想像も出来ない哄笑。
  • 「ルビーの指輪が…」
    そうポツリと呟くシオン。それとほぼ同時に、今までの自分になかった勇気が湧いてくる。ちゃんと言わなくちゃ──。
    「わたしの人生に手を出さないでよ…!ゼノ!」
    普段は細い声の彼女が、凛とした声を出す。
  • 嘘だと言って欲しかった。ゼノはいつだって笑顔で、優しくて、格好良くて、シオンはそんな彼に恋をしていて──だが、今目の前に居るゼノは全くの別人だ。
    「ゼノ、離して……!お願い……!」
    シオンの言葉に呼応するかのように、指輪が光り始める。
  • 「手荒な真似はシオンにしたくない、おとなしく部屋に戻ってくれるかい?」とガシッと手首を強く掴まれる。
    「痛いよ…、ゼノ…っ」
    シオンの声は痛みと怖さで震えてしまう。
  • 「大切そうに荷物を抱えて、どこに行くつもりなんだい?」とゼノ。口元こそ笑っているが、ゾッとするほど冷たい声だった。
    「……言ったはずだよ、シオン。彼らに関わってはいけないって」