しりとりで小説作ったー

2022年7月9日に作成 #ネタ
しりとりで小説を作りましょう!
多少話に整合性が取れなくても大丈夫!気軽にどうぞ!

NGは中傷など倫理に悖るもの
その他しりとりのルールに則っていないものや、単語のみもNGです
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  • トントンと優しく肩を叩かれる。
    今、シオンのいる廊下は人通りが少ないため、恐る恐る振り返るとゼノがいた。
    「ゼノ……。どうして、いるの?お家に帰ってたよね…?」
    しかしゼノは答えず、再度あの時のように瞳が妖しく光った。
  • 旅に出る──。今までは使用人達やゼノに頼っていたことも、全て自分一人で解決しなければならない。無論、不安はある。だが、それ以上にシオンは胸の高鳴りを感じていた。
    「まずは……あの人のところまで行こう。手当てをしないと……」
  • 大切そうにルビーの指輪を手のひらに乗せた。キラキラしていて、見惚れてしまう。「指輪…、持っていこう」とぽそぽそした声で呟く。
    ハンカチ、救急セット、小さいキャンディ、手帳をカバンに入れる。
    シオンは屋敷の使用人に見つからないように、そっと自室を出た。
  • ルビーの指輪に、ふと目がとまる。お母様の形見だという。しかし、シオンには母の記憶がない。まだ幼い日に亡くなったのだと聞かされているだけだ。ひょっとしたら、お母様に会えるのではないか。たとえば、空の先で。シオンが幼い日から密かに思い続けてきたことだった。
  • ただ空を眺めていても、何も変わらない。こっそり屋敷から抜け出そう。
    シオンはそう意気込み、外に出るための支度をするが何が必要なのか分からず、手が止まる。
  • 流れる涙をシオンは我慢できなかった。しかし、ゼノにも逆らえなかった。……その夕方、シオンはひとり屋敷の窓から空を眺めて思う。空の上はどうなっているのだろう? あの翼を持った人はどうなったのだろう? また、自由になりたいという思いにとらわれた。
  • 「探したら駄目だからね、あの人を」とゼノは間髪入れずにシオンに釘をさす。
    無力で何もできない自分が嫌いになる。もし、外の世界についての知識があったら──。少しは違う結果になっていたのかな。
  • 「いいや、ダメだ。そろそろ帰らないと、君を連れ出したことに爺やから僕が大目玉をくらってしまう」
    爺やとはあの時駆けて追いかけて来ていた執事のことだ。
    「でも……」
    翼の人を振り返ると、どこか呆れたように、どこか諦めたように首を振った。
    「行きな、嬢ちゃん。……空は繋がっているさ」
  • 「なんでなの?」と言おうと口を開くが、ゼノは彼女の腕を掴んだまま歩き出す。シオンは必死に抗しながら言った。
    「ゼノ、お願い…!あの人の手当てしたい…」
  • 大木に背中を預けながら、翼人は「嬢ちゃんは優しい人間だな」と笑った。シオンの目から見ても、明らかに無理をしていることが分かる。
    「でも、俺のことは放っておいてくれていい。銀髪の兄ちゃんの言う通りさ。違う世界の住人同士、本当は関わらない方がいいんだ。……ここに呼んだりして悪かったな」
  • 「苦しそうなの、この人!」。シオンは自分でも驚くくらいはっきりと言った。たしかにこの翼の生えた人は心配だ。しかし、それ以上に、なにかこの翼の先には自由があるように感じる。シオンはそう思う自分を自覚した。
  • 「行こう、シオン」と業を煮やした様子のゼノに腕を掴まれる。
    「で、でも……この人……怪我をしてる、から」
    ゼノの鋭い眼光に気圧されながらも、シオンはしどろもどろに言葉を紡いだ。ゼノは苦虫を噛み潰したような表情で「彼らと関わってはいけない」と呟く。
  • 「大丈夫…?」
    シオンは翼人に近寄る。
    何も持ってきていない自分に手当てはできないが、どうにかして助けたい。
  • 対峙するゼノと翼人の間に挟まれる形になるシオン。どうしたら良いのか分からずオロオロしていると、翼人が「ッ……!」と小さく声を上げた。見ると、右手で肩口を押さえている。どうやら怪我をしているようだ。
  • ぶどう色の瞳のシオンは、視線をゼノの方に移す。
    「シオン…」
    心配そうな声音だった。
  • 「いえ、わたしは……」
    シオンは言葉を紡ぐ。
    背後では林の入り口にホバーヴィークルを停めたであろうゼノの声がわたしを呼ぶ。
  • たしかこっちから……。小さな林の中にに向かう。すると、木漏れ日を浴びて白く輝く白いものが見えた。「エッ……!」と声を上げてそうになるシオン。翼の人はそこにいた。「しっ。静かに、お嬢ちゃん。ここの人だね? そんなに驚かないでくてもいい」
  • 呼び声はどこだろうとシオンは見渡した。
  • 素足のまま駆けだす。後ろで反重力エンジンのかかる音がする。
    逃げなきゃ、でも、どこへ?
    不意に、声がした。
    「お嬢ちゃん、こっちだよ」