返信の受付は終了いたしました。
-
-
- 読み込み中...
シャランちゃんと呼ばれたもう一人は、金の髪にややシャープな輪郭、おなじくまんまるの瞳をキラキラさせてわたあめをぱくついている。
通りにあった足元の何かの箱を、身体の固い人ならひっかけて倒れるところを金髪を揺らしてひょいと飛び越えていく。
「ねーシャランちゃん、ちょっと面白いうわさ話聞いたんだけど知ってるポン?」
ソランは箱を避けてシャランの隣に並んで歩く。
「何の噂~?まだ知らないかもポン」
ニコニコと、やや得意げにソランが続きを話す。
「光の世界の中にはただただ生き続けてる魂がいるんだって。長く居すぎたせいで少し認識がずれてて、近づいた光の世界の住人を
攻撃してまわるらしいっポン。シャランちゃん聞いたことあるポン?」
シャランはわたあめを全部食べ終わり、その残った棒を手首のスナップで軽く振り回してわたあめを再出現させる。 -
-
-
- 読み込み中...
ひとくちかじって、
「う~~~ん、聞いたこと無いポン。でもそんな魂がいたら、それはずいぶん悲しい事だポン・・・その、彼女?彼?にも安らぎが訪れてほしいっポン」
神妙な表情で、わたあめをばくばくと食べ続ける。
「・・・そうポンね、シャランちゃんは優しいポン」
わたあめを食べているシャランの腕に腕を絡ませ、勢いよく体を寄せる。その勢いで、シャランは一歩たたらを踏んでしまう。
「ちょっ、ソランちゃんは力が強いんだからセーブしてって昨日も言ったポン!」
「ごめんっポン☆」
「んむ~~~、今日の晩御飯をソランちゃんが準備してくれたら許すポン」
「わっ分かったポン、任せるっポン!」
にぎやかな青と金の後ろ姿は通りを小さくなっていく。同じ通りを、疲れ切ったような酔ったような足取りで歩く魂がいた。
赤い三つ編みに古びた緑の服を着たその存在は、すぐに角を曲がって見えなくなった。 -
-
-
- 読み込み中...
それから数日、光の世界は表面上穏やかに過ぎた。
たくさんの魂たちのうち、ある者は転生先を得て旅立ち、またある者は緩やかな時を楽しむ。
ソランとシャランも知己のうちひとりをしばらく見ていないことに気づき、おそらく旅立ったのだろうと、彼の幸多からんことを祈った。
今日の二人はお弁当を持って森近くの草原に遊びに来ていて、花を眺めて匂いを楽しんだり、森に少し入って生き物たちと
軽い追いかけっこをしたりして過ごしていた。
「あははっ、鹿さんって脚速いねぇー!おいらもうくったくただポン~」
木々の中だというのに軽やかに走り回る鹿はパワー型のソランにはやや荷が重かったらしく、森のすぐ出口の草が深いところでひっくり返ってしまった。
やや離れて草の背が低くなっていくあたりに鮮やかな布が広げられていて、そこには金の髪にややシャープな輪郭の妙齢の女性に見える人物がおり、彼女はそんなソランを見てくすくすと笑った。 -
-
-
- 読み込み中...
「楽しかったみたいね~ソランちゃん」
草の中から返事がする。
「うん!おいらは遊ぶの大好きだっポン」
今度は森の中から声がした。
「そうナノ、なら私とも遊んでほしいナノ」
ソランは草の中で空を見たまま、深く考えずに返事をする。
「いいね、今度はいssy・・・」
そこまで言ったところで飛び起き、シャランの居るところまで草を蹴散らし走る。
「アナタ、誰っポン・・・?」
シャランも布から立ち上がり、軽く身構えて声の主を睨む。
ゆら、と酔ったような足取りで森から草原へ一歩進む。手に何か棒のような物を持っている。
この光の世界でまさか武器ということは無いはず、だが、二人ともそれがただの木切れとはまるで思えなかった。
もう一歩。
ソランの寝ていたあたりは草が倒れており、おかげで彼女の姿が良く見えるようになった。 -
-
-
- 読み込み中...
銀の髪、黄色のふわふわしたものがついた棒、全体的にダークカラーのドレスのような服を着た少女といえる外見だった。
少女といえないのはその表情。空虚であり、意志も感情も何もなかった。
その口元だけが、白い歯を見せてニィィと笑う。
「一緒に、あそぼぉ!」
手に持った棒を振るう。
何か光の塊のようなものが飛んできて、二人は咄嗟に避けた。 -
或いはきらきら輝くたくさんの品々が並べられた建物が続く通りがある。そこを、様々な姿をした人達が行き交っていた。
ここは光の世界。たくさんの魂たちがついに行きついた、穏やかな安寧の世界だ。
その道を、若い女性に見える二人が歩いていた。
よく見ると、二人はそれぞれ手におやつのわたあめを持っている。系統の違う顔立ちは確かに違う人間であると伝えているが、
同じおやつを同時に美味しそうに頬張る姿はそっくりである。
「んーーやっぱり美味しいポン。ねーシャランちゃん」
内に巻いたボブの青い髪、ややまるく愛嬌のある顔立ちの彼女が実に幸せそうな表情でもぐもぐと咀嚼している。
まんまるのくるくると良く動く瞳は彼女の可愛らしさを引き立てていた。
「そうポンね~ソランちゃん。美味しいからいくらでも食べられちゃうポン~」