小説書いったー

2022年5月28日に作成 #趣味
420文字以内の小説を書きたい読みたい人向け
・一次創作のみでお願いいたします。
・ジャンルは冒頭か返信部分に書くとわかりやすいですがなくても問題ありません。

※現在、改行を使った420文字小説の場合、文字数オーバーでエラーが出るようです。
お手数をおかけしますが、文字数だけではなく改行も1文字とカウントして420文字以内になるよう調整して頂けると助かります。
このTterはアーカイブのみ閲覧できます
  • 私は両手を目一杯広げたよりも大きいガラスの箱の中で暮らしている。親も、先生も、クラスメイトも、誰一人箱の存在には気付かないのに内側に入ってくることは決してなかった。それはとても気楽で、どこかーー……。
    浮かびかけた想いに蓋をして、いつも通り教室じゃない部屋の扉に手をかける。カラカラと開いた先に見えた人影に思わず後退った私をちらりと見て、何かを耳打ちあいながら歩き去っていく人達から隠れるように縮こまった。

    「あれ、君もケガ……はしてないね。顔色悪いし貧血とか?」

    妙に馴れ馴れしい調子で近付いてくるその人の右手の親指には、なんの変哲もない絆創膏が巻かれていた。否定する暇もなく白いベッドに押し込まれ、丁寧に布団をかけられた。

    「じゃあ、お大事に」

    その人はそんな言葉を残して消えてしまったけれど、ほんの微かにガラスが溶け始める音が聞こえたような気がした。
  • 可憐な少女が立っていた。
    透き通るような白い肌、ガラス玉のような瞳。どこか儚げな独特の雰囲気を宿しており、僕は目を奪われた。
    それは7月の朝のことだった。
    住宅街から少し離れたところに立派な家が建っている。そこの庭先に彼女は居た。彼女の周りには白い花が沢山咲いている。
    彼女は笑っていた。
    まるで絵画のような美しい光景だった。

    「あぁ、あそこの家か。」
    友達に今朝の出来事を話すと、どうやら知っているらしかった。
    「なぁ知ってるか?あそこの庭白い花が沢山咲いてるだろ?あれチョウセンアサガオって言ってな......」
    薬物にも使われる花らしいぜ。
    友は声を潜めて言った。

    僕は突然不安になり帰りがけにもう一度あの家に寄ってみることにした。
    7月の逢魔が時はゆるゆると日が落ちる。
    彼女は庭に居た。
    朝顔の花は閉じている。ずっとそこに居たのか、偶然居合わせたのか分からない。
    彼女は僕の姿をみとめて、笑った。
    この世のものでないようなぞっとする美しさを秘めた笑みだった。
  • 僕に残っている1番古い記憶はどことも分からない地下牢からだった。なぜ生まれたのかも、どこに居るのかも分からなかった。ただ分かるのは、ずっとこの場所に居たらいつか死ぬ事だけだろう。
    幼い僕には脱走できるような力もなく、餓死を待つのみだと思っていたが、そんな時にある者がやって来た。
    マントを深く被っていて、性別年齢は分からなかった。その物は牢の格子越しにこちらを見て僕に話しかけた。
    「君は外の世界が見てみたい?」
    「お願い、出して!!」
    僕は必死に答えた。その言葉を聞いたマントの奴は少し口角を上げたように見えた。
    マントの何者かは少ししてから答えた
    「分かった。見せてあげる」

    僕にはこの後の記憶が無い。というのもこれは恐らく前世の記憶なのだ。
    「あーあ、なんで忘れるんだ」
    ため息をつきながら僕はソファに腰かけた
  • 「今日の面接、微妙だったかな」
    就職活動の真っ只中、私は苦戦していた。
    周りは次々と内定が決まり始める中、私だけが遅れをとっていた。
    正直言ってかなり焦る。
    余計な情報を入れたくないがために、友人と繋がっているSNSは見ていない。

    学生時代のちょっとしたエピソードに脚色を加え、自分がいかに素晴らしい人間かをアピールする、私はそういったことが苦手だった。
    綺麗なことばかりを書き連ねた履歴書を見て思う。
    ここに書かれているのは一体誰の話だろう。
    私なのに私じゃない。
    面接の間だって、果たしてあれは私と呼べるのかわからない。
    まるで別の人格が憑依して、上澄みだけで喋っているような感覚だ。
    個性ばかりが求められて、平凡な私は求められない。だから履歴書の中身も面接の間も、そこで本当の私は息をしていないのだ。

    自宅に着いてパンプスを脱ぎ、スーツを脱いで、一日中ひっつめていた髪の毛を解く。
    身体中が軽くなる。
    「ああ、本当の私は今の私だ」
    人間の血が通い始める感覚がした。
  • 真夜中に出会ったその生き物は、深い藍色の瞳を光らせ、猫と同じぐらいの白い体躯と砂漠ギツネと見紛うほどの大きな耳を持ち、流星のような尾をしていた。青白く長い毛が、二又に分かれて三日月を象るようにして伸びている。それは見るからに美しく、視線を引き付けた。もっと近づいてみようと歩みを進めたところ、気配に気づいたのか足早に飛び去り闇に消えてしまった。
  • 『湿度』

    空が巻層雲に包まれると、あの男の中弛みした湿り気を思い出す。曰く、それは真心と言うが、私の知る真心とまるで違うので、おそらくはエンコードかデコードのどちらかが誤っている。
    彼が傍にいたいと言ったので、私はそれを容認したが、与えられたのはじめじめと纏わりつく不快感であって、温かい抱擁ではなかった。寒気。執着の熱源は彼自身ではなく、私から吸い取った熱を放射しているに過ぎない。その熱を以て彼は、私の心さえも奪い取ったのだと勘違いした。
    しかして彼は、聞き分けが良くマイナスの熱もよく受け取った。私が嫌だと言えばやめ、私が拒めば離れ、私が泣けば今更な熱を返そうとするので、とうとう終わらせることにした。
    彼は何も言わなかった。
    待ち望んだ独りだ。

    ああ、気持ちの良い乾風。
    気持ちの良い乾風。
    気持ちの良い乾風。

    ただ、気持ちの良い乾風だけが吹いている。
  • 近所に住んでいた無口な女を、私たちは魔女と呼んでいた。
    魔女は美しい容貌で、毎朝集まって登校する私たちのことを、二階の窓からいつも眺めていた。誰かがふざけて手を振ると、魔女はうっすらと微笑んで手を振り返した。袖口からちらりと覗く手首は、小学生だった私の目から見ても、病的なほど細かった。
    中学、高校と上がり付き合う仲間が変わってしまえば、もう誰も魔女の話などしなくなった。魔女もほとんど姿を見せず、部活動で帰りが遅くなった夜に魔女の家の二階を盗み見ても、そこにはただぽっかりと暗い闇があるだけだった。
    それから十年近く。慌ただしい日々の中で魔女のことなどすっかり忘れたまま、幼い娘を連れて実家に帰省した朝だった。玄関先で遊んでいた娘が、ひどく興奮した様子で家の中に駆け込んできた。
    「あのね、魔女のお姉さんがいたの!」
    私はあわてて外へ出た。唾を飲みこんで魔女の家の二階の窓を見上げると、見覚えのある女が、闇を背に微笑んで手を振っていた。
  • トラックに轢かれた。
    そこで記憶が途切れている。
    僕が目を覚ますと見知らぬ景色が広がっていた。草花がやけに鮮やかで、空も建物もリアリティがない。
    見知らぬ少女に声をかけられる。
    「もう!こんなところで寝てたんですか?!」
    頬を膨らませる少女は、容姿がまるで漫画のようだ。しっかりしてください!と少女が言う。僕は近場の水たまりを覗いてみた。 
    驚いたことに漫画のような容姿になっている。
    異世界転生。
    きっとそうだ。ならばこの世界を謳歌しよう。
    少し元気が出てきた。
    ──
    百合の花が敷き詰められた棺には、男子学生が眠っている。
    死因は事故死。飲酒運転のトラックに跳ねられ、即死だった。遺体の損傷は激しかったが、顔の部分は残っていた。
    棺の中には少年が好きだった漫画本も納められている。遺族の両親が涙を流している。 
    「可哀想に」
    「本当に。でも、見て。全然笑わなかったあの子が少し笑っているように見えるわ」
    もうすぐ棺は火葬場へと移動する。
  • 「花になりたいのか」
    私は植物の意思を感じ取れる。果たして植物に意思があるのか定かではないが、直感的に伝わるのだ。水が欲しい、太陽が心地よい、大抵はそんなものだ。
    たが今日は一風変わった草に出会った。そいつは庭の隅に生えていた。抜いてやるかと手を伸ばすと例のごとく意思が伝わる。
    「花になりたい」
    抜かないで、と言われる予想をしていたから驚いた。花。草にも夢があるのか。
    私は気になって色々と調べてみた。
    どうやらこの草には花が咲かない。生まれながらにしてそういう種類なのだから、世話や努力で変わるものではない。
    こいつは自覚がないのだろうか。
    せめてもの慰みに、花びらを乗せてやった。
    すると、微かに嬉しそうな気配が伝わって来た。生まれながらに定まっている性質は、どうすることも出来ない。
    それでも夢を見るぐらいは出来る。
    この草は、これからも叶わぬ夢を見続けるだろう。幸せなのかはわからない。
    だが、引っこ抜くのはやめにした。
  • ハァ、今日も疲れた─。
    大きな溜息と共に電車の空席に座り込むと、おもむろにスマホを取り出し愚痴投稿サイトを開く。
    (あ、応援ついてる。)
    昼休みに投稿した愚痴にいくつかの共感のコメントが寄せられ、口の端が上がるのを悟られないか周りを気にしつつ、マスクで見えないだろうと思わず微笑んだ。
    と、その時だった。
    ピロン。
    SNSの通知音が鳴る。
    (彼からだ)
    [おやすみ]
    たった四文字と自撮り写真。でもそれだけで嬉しくなる単純さに我ながら呆れる。
    [おやすみ]とこちらも送る。
    彼はとても忙しい。だから時間のない中でこうやって送ってくれるだけで満足。
    本当はもっと側にいきたいけどそれも難しい。あの人はモテるから。
    だから誰よりも理解してあげる存在でありたい。
    だから誰よりも彼を信じてあげる存在でありたい。
    だから誰よりも近くにいてあげたいの。
    GPSによると彼のマンションはこの駅の近く。
    ずっと見守ってあげるからね。
  • 「小説書いったー?」
    変な名前の書店、それが第一印象だった。近くに新しく書店ができたと聞いて場所だけ調べて来たはいいが、俺は類を見ない珍妙な店名に怖気づく。こんなことなら、下調べしてから友達でも連れて来ればよかった。
    店の外観は感じがいいものの、開店直後なのに人の気配はない。これで二十四時間営業なんてどうやって経営……まさか非合法なアレソレが、いやまさか。
    進むも戻るも躊躇って動けない俺の目の前で、唐突に扉が開いた。チリン、と小気味よく鳴るベル。一拍置いて穏やかな声がした。
    「本が欲しいんでしょう」
    「えっ、まあ。えっと、店員さんですか、店主さんですか」
    「本、ありますよ。本、書けますよ。難しいことじゃありません。どうぞ中へ」
    緩慢な笑みを浮かべたその人は、扉を開けたまま俺を見つめる。
    「あ、じゃあ……ちょっとだけ」
    書けるとはどういうことかと聞きそびれたことも忘れ、俺は誘われるままに店内へ足を踏み入れた。
  • Tter主(PDGbEN)2022年5月28日
    「小説書いったー」作成しました。420文字以内の小説を書きたい方、読みたい方、是非ご利用ください。
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