小説書いったー

2022年5月28日に作成 #趣味
420文字以内の小説を書きたい読みたい人向け
・一次創作のみでお願いいたします。
・ジャンルは冒頭か返信部分に書くとわかりやすいですがなくても問題ありません。

※現在、改行を使った420文字小説の場合、文字数オーバーでエラーが出るようです。
お手数をおかけしますが、文字数だけではなく改行も1文字とカウントして420文字以内になるよう調整して頂けると助かります。
このTterはアーカイブのみ閲覧できます
  • 夫が出て行った。
    出て行くずっと前から、私たちの関係は終わりに向かって転げ落ちていたように思う。

    これから私は1人で子供を育てていかなくてはならない。辛さや悲しみから涙がこぼれたが、私は子供を抱きしめて前に進む決意をした。

    ───


    家を出た。
    売られたケンカを思わず買ってしまったが、まぁちょっとケーキでも買って帰れば向こうも機嫌を直すだろう。格好がつかないので2、3日はビジネスホテルにでも泊まるか。

    まったく、仕事で疲れてるっていうのにぐちゃぐちゃ話されるこっちの身にもなれってものだ。俺はため息をついた。

    「なかったことにしてやろうか?」

    頭にはちまきを巻いた、絵に描いたような酔っ払いが突然話しかけてきた。

    「奥さんとケンカしたんだろ?なかったことにしてやろうか」

    「ははは、できるならお願いしたいですね」

    適当に調子を合わせて軽口を叩き、俺はホテルに向かった。
    翌日、ケーキを買って帰ったら自宅は跡形もなく、嫁も子供も最初から存在自体がなくなっていた。
  • 「わたしミニーマウス。大好きよ、ミッキー」
    玄関に立つミニーマウスはそういった。ヤニのにおいが染み込んだ薄汚い茶髪、アディダスのジャージ、底のすり減ったクロックス。そして右手にはトカレフ。
    「まあ、ゆっくり話そうじゃないか……、ミニー。まずは銃を置こう、ね?」
    おれはできるだけ落ち着いた声でそういった。
    「うそ、ミッキーはそんな声出さない」
    ミニーマウスは銃口をおれに向ける。落ち着け、ミッキーはどんな声で喋るんだ? そもそもネズミは喋るのか? ネズミ!
    「ぼ、ぼくはミッキーだよ! 銃は、きらいだよ! ピギィ!」
    奇声をあげるおれ。ミニーマウスの目はじっとりとおれを見ている。
    ミニーマウスはゆっくりと銃を足元に置く。
    「あなた、やっぱりミッキーね? 入っていい?」
    「ようこそミニー!」
    おれはまた奇声をあげた。部屋に入ってきたミニーマウスはテレビで千鳥の深夜番組を見た。終わると「じゃあ帰る」といっていなくなった。トカレフだけそこに残った。おれは疲れた。
  •  そうだ、コーラが飲みたい。
     いても立ってもいられなくなった俺は、部屋着にしている中学時代の紺ジャージのまま外に飛び出す。右ポケットに小銭、左ポケットに家の鍵。足元はキティちゃんのサンダル。
    「しゃーせー」
     名前を知らないだけの顔見知りとなった店員の挨拶を聞き流し、俺はドリンクコーナーに向かう。モンエナ、コーヒー、酒、水、ポカリ。色とりどりのペットボトルや缶が並ぶ棚は、まるで南国の花鳥園のようだ。だが──。
    ──ない。赤と白のロング缶、もしくは茶色のペットボトル。そのどちらも見当たらない。右を見ても左を見てもコーラは無い。ガラスに映った己の姿を見て、酷い寝癖が残っていることにようやく気がついた瞬間、心のろうそくが吹き消される。
     さっきまでの高揚感はどこへやら、今はただひたすら帰りたかった。サンダルをペタペタ鳴らしながら店を出る。
    「っーしたぁ」
    気の抜けたコーラのような挨拶を背中に受けながら空を見上げる。多分、明日も雨だろう。
     あーあ。
  • パブリックTLで「書いったーの投稿読んで小説書いてみたくなったけど、よくわからない…」みたいな呟きを見るので、小説っぽくなる書き方のバズツイ置いてみます。先頭にhを足してください。主さんでもないのにお節介でごめんね。「ttps://twitter.com/ofiwtonsou/status/1053583412726910976?t=tLixrPW_1LIHVo4a_Xnmyw&s=19」
    色んな人のSS読みたいから増えますように〜。
  • とある神社で手を合わせる1人の人影。周りにはその人物以外誰もいないが、何やらブツブツとつぶやく声が聞こえてくる。

    「…世の中には各分野に天才がいるのに、なぜ僕にはなんの才能もないのですか。はっきり言って不公平だと思います。命は平等ではないのですか、そういう贔屓の仕方は良くないです。」

    すると神々しい光と共に、老人があらわれた。

    「さっきからブツブツうっさいのぉ、おちおち昼寝もできんわい。そもそもこんな片田舎の神社でぶつける内容でもなかろう。大体な、創造神様は才能は皆につけとるから平等じゃぞ!」

    「か、神様!?…平等なんて嘘だ!それなら僕にはどんな才能があるって言うんですか!」

    「嘘じゃないわい。よし、お前さんの才能を見てやろう。どれどれ…………うむ。」

    「どんな才能があるんですかっ?早く教えてくださいよ!」

    「お前さんは…誰よりも猫に好かれる。」

    「えっ?」

    「猫に好かれる。」

    「それ、才能…?」

    男はその後、猫喫茶で店員になり幸せに暮らしたそうな。
  • 「あなたね、暗い話ばかり書きすぎなんですよ」
    「はぁ」
    「もっと前向きで明るい小説を書いたら? ハッピーエンドじゃないと売れませんよ」
    「はぁ」
     はぁ、はい、はぁ。それだけ返して編集室を去る。根暗な人間なのだから暗い話しか書けなくて当然じゃないか、とは言い返せなかった。俺は根暗でコミュ障でぼっちで陰キャのチー牛なんだよ。八つ当たりがてら蹴り飛ばしたチューハイの空き缶が甲高い悲鳴を上げて道路を転がる。
     帰り道、コンビニでしこたま酒を買った。埃の積もったミニボトルのウイスキー、ダブルアセロラのストロングゼロに、紅茶風味のクラフトビール。味なんかどうでもよかった。どうせただバカみたいに飲み干すだけだから。
     ベランダに出て、つまみ代わりの味付け海苔を齧りながら夜景を見る。ストゼロはゲロみたいな味がしたし、ウイスキーはただ喉を焦がしただけだった。
     八つ当たりがてら投げ飛ばした空き缶は、無言のまま暗闇に消えていった。こんな都会じゃ星も見えない。
  • 「小説を書くのって難しいよね」
     彼女は物憂げに呟いた。だが、こうしてセリフから書き始めると案外すんなり書き進められたりする。より小説っぽくするなら──。
    「──こうやって罫線を入れるのがいいね」
    「そうね……。あとは"……"を入れるのもオススメだわ」
     罫線や三点リーダーに頼るのもいいが、たとえば今やっているように字下げするとより"それっぽく"なる。ただし、字下げすると文字数が削られてしまうから諸刃の剣だ。あるいは、こうするのもいいだろう。……体言止め。
    「それよりも!や?の後に空白を入れるのもそれっぽくなると思うの、私」
    「今のは倒置法?」
    「ええ。倒置法と体言止め、この二つを使うと、なんとなく小説っぽくならない?」
     僕は頷き、コーヒーを飲む。通りに面した大きな窓ガラスから夕日が差し込んで目に眩しいくらいだ。だがらそれよりも眩しいのは──。
    「……小説書いったーがもっと賑わえばいいわね」
    そう、彼女の笑顔だ。
  • 「私、彼氏が出来ました」「わぁ!おめでとうございます!」私はメイド喫茶にアルバイトとして働いてるただのスタッフ。でも仕事をこなしている間に特別なお嬢様ができた。でも私もお嬢様も女の子。「好きです」って言っても冗談と思われるか営業と思われるか、本気と思われないだろうと思っていた。告白して気持ち悪がられたり嫌われるのも嫌だったからこのままでいいなんて思ってたらお嬢様は私の手の届かない存在になってしまった。「お幸せになってくださいね、お嬢様」それが私が出せる精一杯の言葉だった。メイドちゃんにガチ恋とか、しかも私は女だし同性愛とか嫌がられると思ってた。今までメイクも髪型も洋服も、全部メイドちゃんに「可愛いですね」って言われたかったから頑張ったことだった。でもやっぱり告白する勇気なんてなくて、ご縁があって男性とお付き合いしたけどやっぱりモヤモヤは取れなかった。「ありがとう」それがお嬢様としての私が出せる精一杯の言葉だった。
  • その日、世界は突如として混沌に呑まれた。

    己の好きなことをするという確固たる意志を持つ者、それに賛同する者、批判する者、自治を促す者。
    それぞれの主義主張が鬩ぎ合い、空気はまさに混沌そのものであった。

    私は成す術もなく傍観していた。
    私はいつだってそうだ。
    ただ静かにことの成り行きを見守り、鎮静化する時を待つことしか出来ない。
    ただ、あまり長くこの空気が続くのだけは嫌だと思った。誰か、この場をおさめてほしい──そう願った時。

    ある種の神々しさと共に、それは現れた。
    『ちくわぶ大明神』
    この荒々しい空気を物ともせず、颯爽と駆け抜ける様はまさに救世主のようであった。

    誰かが叫んだ。
    「あれは、彼のちくわ大明神の御子孫……!」
    私も耳にしたことがある。
    世界の混沌際に現れ、人々の興味を逸らし、瞬く間に争いを鎮める神のことを。

    「神の子孫、か」
    伝説の神の子孫は、確かに異彩を放ち威厳をもってそこに顕現された。
    私はこの日のことを忘れることはないだろ
  • 「ちくわぶ大明神?」
    「そう」
    彼はストロー…もちろん流行りの紙製…でアイスコーヒーをかき混ぜながらぼやく。
    「ちくわ大明神ってネタは知ってるだろ?あれの亜種みたいでな、出処を調べて記事にしろって……。いくら俺が底辺ライターだからって、そんなわけわかんねぇ仕事よこすなっての」
    彼はストローから手を離すとびっしょりと汗をかいたグラスを握る。氷はとっくに溶けきり、コーヒーはもはや水同然に薄まっているだろう。彼は更に言葉を続ける。
    「まあ、一応調べたよ。Ttersってサイトで一瞬だけ流行ったネタだってことがわかった。でもそれだけだ。記事になんかできねぇよ……」
    勢いをつけて飲み下すと、彼は顔をしかめて窓の外を見つめる。私もそれにつられて外を見る。大雨の中、子供の手を引く母親がバス停へと急ぎ足で駆けていく。
    「──捏造したらどうだ?」
  • とんとんとん。
    控えめなノックの音に気づき、部屋のドアを開けるが、誰もいない。「あのぅ…」足元から聞こえた小さな声の方を見れば、なぜかハリネズミが行儀良くこちらを見ている。

    「泊めてもらえませんか?」

    ダメだ、俺はきっと疲れているんだ。こんなに突然はっきりとした幻覚を見る自分に怯える。ハリネズミはそんな俺に構わず、にっこりしてシュークリームを取り出した。

    「これ、ささやかですがお土産です」

    シュークリームは俺の好物だ。
    もうダメだった。涙が頬をつたう。俺はハリネズミに知り合いはいないが、このハリネズミの瞳はよく知っている。それに、声が…おととし亡くなった婚約者そっくりだった。

    「おかえり」

    「あれ、もうバレちゃったか」

    「当たり前だろ」

    彼女はハリネズミに転生していた。
  • 「そんなに遠慮してたらもったいないよ。もっと好きに生きようよ!」そう言う彼女の笑顔が眩しい。まるで真昼の太陽を直で見てしまった時のように、目が痛くて俯いてしまった。──そう、励ますだけなら簡単なんだ。今まで出会った人達もそうだった。結局自分が一番大切だから、道を見失った人間を励ます自分に酔いしれているんだ。……こんな捻くれてしまった自分は、もう明るい世界には行けないのだろうか。「……私も昔は暗いだけだったの。でもそんな私も変われたから。変えてくれるきっかけをくれた人が居たから。……だから貴女も大丈夫」差し出された手。戸惑った私の手を無理矢理引っ張って引き上げて。「一緒に行こう!」
  • 耳と尻尾が生えた長身の青年は、僕に呟くように話した。いつもは明るい彼だが、今日は元気がないようだ。

    「雨は嫌いなんだ。濡れたら寒気がする。身体が火照って動けなくなる。それに……。」

    目を伏せた。顔が異様なほど青ざめている。
    人目を引く銀色の大きな尻尾も、ふわふわで柔らかそうな耳も、今はぐったりと項垂れたままだ。

    「どうして雨が苦手なの?」
    僕は彼に問いかける。
    しばらくしたあと、ぽつりと呟いた。

    「怖いんだ。」
    「雨に濡れたら、俺じゃなくなってしまう。」
    彼の身体は、小刻みに震えている。

    「別人になってしまうんだ。何もかもが。」
    謎めいた言葉をつぶやいた。

    「頼む。」
    許しを講うように跪いた。
    何かに脅えているみたいだ。

    目の前で両手を合わせる。
    彼の身体の震えは一層強くなる。

    「君は俺を閉じ込めないでくれ。」
    「頼むから、別人になってもショーケースに入れて飾ったりしないでくれ。お願いだから。」

    僕は彼の背中をゆっくりさすった。
    最後まで僕を見つめたままだった。
  • 君に初めて会った時、俺が君に抱いたのは「うるさいやつだな」だった。
    最初はただ、「利用できればそれでいい」と思っていたんだけど。

    ……まさか、そんな君を好きになるなんてな?

    俺の隣で眠る君が愛おしい。
    その髪を、ほおを撫でたくなる。
    ずっと寝顔を見ていたいけれど、早く目を覚まして、いつものぼんやり顔で「おはよう」って俺を見てほしい。

    ……いつからだろうな?
    その瞳が、何よりも綺麗で、俺を魅了して離さないってことに気づいたのは。

    愛してる。
    可愛い可愛い、俺の奥さん。
  • 代わり映えのない、でもそれなりに楽しい毎日を送っていた。朝食を食べながら今日は英語の授業で当てられるかなとか放課後は友達とどこかに遊びに行こうかななんて考える。今日もふっくら炊きあがったご飯が美味しい。

    「非常に残念なことですが、この世界はあと285文字で終わります。」

    突然テレビから現実味のない言葉が聴こえてきた。世界が何だって……?っていうか文字って何?時間とかじゃなくて?いやそもそも世界が終わるって本当?!冗談じゃない!私の人生まだまだこれからのはずなのに……!やりたいことも、行きたい所もたくさんある!
    何よりも、まだ恋が成就していない!
    そう思った瞬間、私は10年以上想い続けている幼馴染の家へ駆けだしていった。

    世界が終わってしまう前にこの想いを告げたくて、大好きなあの人の名前を呼んだ。

    「ずっと、あなたのことが……!寿限無寿限無五劫の擦切れ海砂利水魚の水行末雲来末風来末喰う寝る処に住む処藪柑子の藪柑子パイポパイポパイポのシューリン
  • 「にゃあ」
    野良猫と目が合った。
    とある路地の片隅。この猫は決まってそこに現れる。恐らくその周辺が縄張りなのだろう。
    通勤で通る道だからほとんど顔なじみだ。
    向こうが僕を覚えているかは分からないが、僕にとってはちょっとした楽しみになっている。
    今日も会えるかと密かに期待していると、やっぱり猫はそこにいた。

    猫という生き物は時折どこを見つめているのか分からない顔をする。

    僕は勝手に目が合ったと思っていたが、どうやら違ったらしい。
    僕を見ているようで見ていない。
    もっと遥か先を見越しているような目だ。
    猫には一体何が見えているのだろう。
    考えると少しだけ怖くなった。
    心の醜い部分を見透かされたような気分になったからだ。

    人には誰しも本音と建前がある。
    この猫には見えたのだろうか、人には見せない僕の心の本音の部分が。
    「まさかな」
    猫は自由な生き物だ。たぶん人間のように本音や建前なんてない。
    「僕に呆れたか?」
    「にゃあ」
    人の心を知ってか知らずか、猫は大きく欠伸をした。
  • マジか。
    寝る前にぐちったーに「猫になりたい」って打って、ちょっとうたた寝してる間に猫になってしまった。スマホはかろうじて打てるけど、画面が傷だらけだ。指紋認証にしてなくて本当によかった。LINEで助けを求めるも、猫になったなんて言っても誰も信じてくれない。
    姿見にはすごくかわいい猫がうつっている。神様。たしかに可愛いですが、自分で何もできないの困るのでやっぱり自分がいいです。人間に戻って猫を飼います。

    「いいだろう、それなら私が飼われてやろう」

    人間には戻れたが、その日以降なんか偉そうな喋る猫がうちに住み着いている。
  • ある日、私は神になってしまった。特別な力が使えるわけじゃないし、世界を創造した覚えもない。もちろんアヤシイ宗教に入ってもいない。ただ外を歩くと有難そうに拝まれてちょっと落ち着かないかんじがするだけ。

    「アナタのおかげで痩せられました!」
    「アナタのおかげで力強くなれました!」
    「アナタのおかげで美肌になりました!」

    何をしたわけでもないのに感謝されて拝まれて少し気味が悪い気もしたが、実は満更でもない。花が咲きそうな気分だ。

    ーーーそれはいけない!早く茹でないと!

    茹でる?と疑問に思ったときには既に熱湯の中。その次は白くて固い床の上。私は神なんだぞ!抗議するも容赦なくマヨネーズをかけられる。どうしてこうなった。
  • 私は卵を生む。時々だけど。
    これはとっても秘密のはなしで、卵が生まれる前日、私は普段愛しく思うものをどうしてか酷く疎ましく感じてしまう。
    まるで世界に自分の足跡が残らないような気持ちで、ぶわぶわとふくらむ布団にもぐり、糸がほぐれて落下するような感覚をなぞりながら眠る。
    そんな夜に見る夢はいつも同じだ。
    宇宙みたいに深い深い空間の中に私は、一人ぽつんと立っている。私はその見知らぬ宇宙の中で当然のようにゆっくりと両手を合わせる。何かに祈るように、何かを守るように、目を閉じる。
    そうしてゆっくりと目を開けると世界は何処までも白く変わっていて、私のさして大きくない手のひらにはキラキラと不思議に輝く卵がひとつ。
    目を覚ますのはいつも決まってそのタイミング。
    そうして、起きた私の目の前には卵を生んだ朝が何食わぬ顔で転がっているのだった。
  • 「ああ、俺もそう思う。もう何もかも諦めた癖に他人を笑う奴はおむつ1枚で街中を歩くより滑稽だ。」
    何も行動しない奴には一生感動も後悔も残らない、少年はそんな男の言葉にやけに流暢に同意した。
    「お前、そんなこと本気で言ってんのか?」
    頭上からこちらを小馬鹿にしたような声が聞こえてきた。
    「なんだよ、さっきと言ってること違うじゃねぇか」
    少年はくちびるをとがらせた。声の主を見上げると、にやりとした笑みがこちらを見つめていた。
    ぷはぁ、手持ちの特大ジョッキを飲み干してから男は豪快な笑い声を発した。「これだから純粋なガキを揶揄うのはやめられねぇな!」
    少年は、真顔になったかと思えば、少しして同じようにニヤリとした笑みを浮かべた。
    「度が過ぎる。次やったらただじゃ置かないぞ」