小説書いったー

2022年5月28日に作成 #趣味
420文字以内の小説を書きたい読みたい人向け
・一次創作のみでお願いいたします。
・ジャンルは冒頭か返信部分に書くとわかりやすいですがなくても問題ありません。

※現在、改行を使った420文字小説の場合、文字数オーバーでエラーが出るようです。
お手数をおかけしますが、文字数だけではなく改行も1文字とカウントして420文字以内になるよう調整して頂けると助かります。
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  • ほしゅ
  • ほしゅ!
  • ほしゅ?
  • ハチだ!!!

    少女は困った。いつもなら避けて通ればよい。蜂なんて関わらずに生きたほうがどちらも平和に過ごせるのだ。

    しかしそういう訳にもいかなかった。

    何故なら少女はすでに、自販機にお金を入れて、ジュースのボタンを押してしまったのだ。

    逃げれば110円が無駄になってしまう。

    少女は逃げる訳にはいかなかった。

    ハチはブーンと羽音を立てて少女の周りを警戒した。

    少女は自販機の口に手を恐る恐る近づける。

    ブン!!!

    より一層音が大きくなったので、少女は一歩下がった。

    心臓の音が速くなる。
    どこだ、やつはどこにいる。
    しかし見当たらない。
    どうやら自販機の周りには花がないので、さっさと去ったらしい。少女は安堵して帰路に着いた。

    玄関の前に来たところで、しかし、足を止めた。

    玄関扉の真前に、カマキリが構えていた。
  • ほしゅ
  • 「勘違いから始まる、恋」
    そんな謳い文句に惹かれ手に取った一冊の小説。
    全体的にどこか見覚えのある展開ではある。けれど主人公がちょっと自分に似ていて共感しやすく、気付いたら読み終えていた。

    読了後の満足感を胸に抱き帰路につく。
    辺りはすっかり暗くなり、人の影は自分ともう一人、同じ方向に向かうらしい影以外には見当たらなかった。
    「主人公の鈍感な所、面白いなあ。私と本当にそっくりで」
    そこまで呟いて、ふと思う。
    「あれ、主人公と私、似すぎじゃない…?」
    急いで記憶を遡る。さっきまではスルーできていた違和感。それが頭を擡げていく。
    好きな色、好きなアイドル。大まかな性格。この程度、同じ人間など山程いる。
    だが、家具の配置は?毎日のルーティーンがこんなにかぶるなんてこと、ある?そういえば、朝食も最後のシーンと全く、同じ…。
    ごくり。無意識につばを飲み込む。

    コツ、コツ。足音が背後から聞こえる。
    待って。これって、もしかして…。
    ぞっとして後ろを振り向こうとーー。
  • そんな季節になったので、いたる所でモッコウバラが咲いていた。
    柵に絡まるつるに、無造作に伸びた枝に、薄クリーム色の花が鞠のように集まって咲き誇る姿は愛らしく、目を楽しませてくれる。
    生家の庭のモッコウバラは今年も花を咲かせただろうか。母が家の周りをぐるりと一周させようと奮闘していた姿を思い出す。懐かしい家のバラは白かった。結局庭の柵一つ分しかつるが絡まないままあの家を母が去って、私も帰らなくなった。
    どこへ行っても、今年も終ぞ白いモッコウバラは見かけない。甘い芳香だけが、風に乗って私の背後から微かに香った。
  • ほしゅ
  •  筆のひと塗りで、爪が一気に艶やかになる。誰もいない夜中の、小さな小さな楽しみだ。仕事の関係で、朝日が登りきるまえに落とさなければならないのだけど、こういうお洒落ってのは思ったよりも楽しい。
     仕事帰りによったドラッグストアで、一目惚れしたポリッシュ。ほんのりとラメが輝くそれは夜を溶かしたような色合いで、思わず衝動買いをしてしまった。ひと塗りで朝焼け前、ふた塗りで深夜の夜空になるポリッシュは、落とすのを躊躇ってしまう。なんて可愛すぎるんだ!
     けれど、もうじき空が白んじてくる。太陽が来てしまう。
    「夜を閉じ込められたらいいのに」
     なんて思いながら、リムーバーを爪先に垂らした。それは乳褐色の色だった。
  • 手元の紙に、真っ赤なペンで書かれた数字を見て絶望した。
    明日は試験なのに、こんな点数で合格できるわけがない。
    外からは雨が地面を打つ音が聞こえてきて、まるで明日の自分を憂いているような気さえしてきた。
    「俺の代わりに空が泣いてる」
    机に突っ伏しながらそういった俺に、友人はひとつため息をついた。
    コツ、コツと爪先で机を、いや、見えないがおそらく点数をつつきながら、呆れたように言った。
    「学のないやつはこれだから困る」
    一応頑張っているっていうのに、あんまりな言い草だ。
    ムッとして顔を上げた先、友人は窓を指さしていた。
    「雨音は集中力を上げてくれる。
    君を応援するために、空は天気まで変えたらしい」

    脳内エアフレンドの声掛けでテンションを上げた俺は、再び解答用紙に向き合った。
  • 「最近寒くない?」
    「え、そんな人引っ付いてるのに寒いの?」
  • カウンターに座った俺は注文を終え、メニューに書かれた長い説明を読んでいた。

    「選び抜かれた小麦粉を当店独自の比率でブレンドし、手と足を使って打った麺は大変コシが強くなっております。自慢のつゆに使われているカツオブシは7種類を絶妙な割合で配合されています。どうぞ風味豊かな香りをお楽しみください。中に入っている野菜は大きめにカットしてあります。億が一マズい時にはお申し付けください笑」

    自信に満ちた文章に期待が高まる。
    運ばれてきた熱々のうどんを口に入れた。


    うん。

    くそまずい。

    この麺は粘土か?スープは醤油の入れすぎで鰹節が死亡している。野菜、デカすぎて中が生。
    材料にこだわっててまずいってどゆこと?
    食材も泣いてるし俺も泣きそう。

    「どうですか…当店のうどんは?」

    店主ドヤ顔。
    お前この出来でよくその顔ができたな。

    「あー…こんな味は初めてです。」

    ぎこちない俺の返答に店主が頷く。

    「皆さんそう仰います。」

    俺は手元で雑誌掲載候補リストからこの店を抹殺した。
  • ほしゅ
  • 「私が笑えない世界が正しいのでしょ?」
     と、目の前の魔王は言った。確かにそうだ。悪は正義に倒され世界は平和になる。よくある話だし、これからそうする予定だ。剣を強く握り締め、魔王に向かって構える。例え相手が華奢な少女だとしても、世界を平和にするためなら。
    「動揺はしないのね」
     まあいいわ。と魔王は玉座から降り、僕の前に立つ。ゆるやかな微笑を浮かべたと思うと、あろうことか跪いた。
    「やるなら一思いに、ね」
    「……どうして」
    「……それが皆にとって幸せな話だからよ」
     その声が、ある子どもを思い出させる。
     大人たちが飴を配っていた日、手違いがあり、数が足りなくなってしまった。皆がねだるなか、ある子どもが突っぱねた。甘いものは嫌いだからと。でも知っている、その子は甘いものが大好きで、その声はひどく震えていた。
    「僕は勇者だ」
    「ええ、だから魔王を」
     ――そういえば、僕が勇者を目指すようになったのは。
    「違う、勇者ってのは、泣いてる女の子を助けるんだ!」
  • ほしゅ
  • ある所に、それはそれは美しい娘がいた。
    欠点がないとは言わないが、珠に入ったその傷さえ、結局は彼女の美しさを助長するものでしかない。
    神が己の理想を込めて作り上げたのだと言われても納得するような、まさに美の体現。
    そんな彼女のことを、多くの人は愛していた。
    しかし、中には彼女に行き過ぎた愛情や嫉妬を覚え、無理矢理に手篭めにしようとする者、傷つけようとする者もいた。
    彼女はそんな者達を常に微笑んでいなしていた。
    とある人が彼女に聞いた。
    "なぜそれでも微笑んでいられるのか"と。
    彼女は笑って、"ストレスを貯めないことこそ、私の美の秘訣ですもの"と答えた。
    彼女は彼女の意向を無視しようとするものの意向を無視し、傷つけようとするものは傷つけた。
    か弱そうに見える長細い手足も、美しいが故に見舞われる危機も、彼女にとっては正当防衛という名の隠れ蓑を作る材料でしかなかった。
    彼女という珠に入った1つの傷。
    それは、どうにも抑えのきかない"加虐衝動"であった。
  • Tter主(PUyUzf)2022年10月22日
    以前から何度か頂いていたもっと長く書きたい方向けのTter作成しました。
    もしよろしければご利用ください。

    小説書いったー1000
  • ほしゅ!
  • 完璧な風景、という言葉が浮かんだ。

    秋晴れの美しい空の下、美しい人が銀杏の樹の下で空を見上げていた。木々の合間から射し込んでいる光、足元に広がる木の葉のじゅうたん、舞い散る黄色い木の葉。
    その全てが額縁におさめられた絵画のように尊く光り輝いていて、近寄りがたいのと同時になぜか涙が出そうなほど懐かしい風景のように思えた。

    やがてその人が立ち去ると、何も変わらないはずのその場所は明度が落ちたように見慣れた景色に戻った。
    何かが変わった訳ではない。だが、あの瞬間に立ち会えたことは小さな奇跡だったのだと思う。忘れないように、記憶の箱の中に今日見た風景をそっとしまい込む。

    生きていると、時々ふいに魂が震えるような風景に出会う事がある。次はいつどんな風景に出会えるのだろう。
  • 女にとって、不変こそが愛だった。
    人の心は幾度となく移り変わっても、金の価値、宝石の美しさは変わらずそこにあり続ける。
    金と宝石の煌びやかさこそが、女にとっての愛だった。
    女はある日、美しい男に恋をした。
    金と宝石を溢れんばかりに差し出して、「いくらでもあげるから」と関係を迫った。
    女にとって、これ以上ない"愛情表現"だった。
    男は冷たい目で女を見た。

    女は一人ベッドの上にいた。
    不治の病と診断され、積み上げた札束も宝石も、女の体の一助にさえならなかった。
    絶望する女の前に、あの時の男が現れた。
    男は女のベッドの上に、あの日女が押付けた大量の札束と光り輝く宝石を降らせた。
    男は呆然とする女に問いかけた。
    「札束の中の人間が、口を開いてお前を慰めたか」
    「その硬い石ころは、お前の涙を拭えるか」
    男の冷たい瞳の意味を、女はようやく理解した。
    男の瞳に映る軽蔑が、その時だけは憐憫と愛情に変わりゆく様を見て
    生まれて初めて女は、変わりゆくものに安堵を覚えた。