小説書いったー

2022年5月28日に作成 #趣味
420文字以内の小説を書きたい読みたい人向け
・一次創作のみでお願いいたします。
・ジャンルは冒頭か返信部分に書くとわかりやすいですがなくても問題ありません。

※現在、改行を使った420文字小説の場合、文字数オーバーでエラーが出るようです。
お手数をおかけしますが、文字数だけではなく改行も1文字とカウントして420文字以内になるよう調整して頂けると助かります。
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  • 屋上にいるせいか、風が強く感じる。「先生、居なくなっちゃうんだ」「──あぁ」「もう会えないんだ」先生はいつも僕に目を合わせない。今もそうだ。目を合わせないまま頷いてる。僕は先生に沢山助けられた。先生が居たから学校も頑張れたんだ。なのに先生は居なくなってしまう。「先生、僕、先生とずっと一緒に居たいんだ」「ごめんな…」先生は申し訳なさそうに下を向くけど、そんなこと僕には関係ない。だってこれからは❝ずっと❞先生のそばにいられるんだからね。「先生、こっち見て」ようやく先生が僕を見てくれる。次の瞬間僕は空を飛んだ。こうすれば先生とずっと一緒に居られると思ったから。先生から僕の姿は見えないだろうけど、それでも僕は先生のそばにいたいから。「大好き。先生。」そう言った次の瞬間、僕の意識は先生の方へ向かった。
  • 「初めて会った時、あなたはビルから飛び降りる寸前でしたね。柵の内側からなんとか説得して、それから危ういあなたをずっとそばで支えてきたつもりでした。

    けれどきっと、支えられていたのは私の方だったのだと思います。あなたには最後まで話さずじまいだったけれど、本当はあの日、私も死に場所を探してあのビルにたどり着いたんですよ。

    まさか『この人を支えるために1秒でも長く生きたい』と思う人が現れるなんて思ってませんでした。

    私と生きてくれてありがとう。子供たち、孫たちを見守って、私がそちらに行く日が来たら迎えにきてくださいな。」

    私は愛しい伴侶の棺に、誰にも読まれる事のない手紙をそっと仕舞い込んだ。
  • 恋人と別れるたびに行けなくなる場所が増えていく。この前は高知県で、その前は愛知県。数年前に沖縄県に行けなくなってから、私にとって最南端は鹿児島県になった。ああ、富山県に行けた頃はよかったなあ。どこの居酒屋に入っても海の幸がおいしくて。でも、もう行けない。行ったらいけない。
    うちはそういう家系だった。別れた恋人の出身地に行くと、もれなく大けがをしたり災難に遭ったりするのだ。先祖の中には命を落とした人もいる。
    「だからさっさとお見合いで結婚しときなさいって言ったでしょ」
    そう言って大好物の芋焼酎をかっくらう母は、九州地方に足を踏み入れることができない。
    「まあまあ、なんとかなるよ。僕がいるんだし」
    父のリュックから大きな文旦といごねりが覗く。ただ一人、うちの中で行けない場所がない父の元には、親戚じゅうから土産物の依頼が舞い込む。
    「それで家族旅行の行き先だけど」
    「あんたの彼氏、どこ出身だっけ」
    ちょっと! と言いかけて少し悩み、北海道、と返した。
  • 通学路のあぜ道に人が落ちていた。
    稲穂のような金髪は無造作に結われており、くたくたになった白シャツのあちこちに乾いた泥が付いている。下半身にはトランクスしか身に着けておらず、そこから伸びる小麦色の足からはゴム長靴が脱げかけていた。
    すわ行き倒れか。はたまた変質者か。こわごわ覗き込むと、胸になにかを抱え込んでいるのが見えた。麦わら帽子だ。
    ひまわり柄のリボン、色とりどりのマジックで落書きされた頭頂部、不格好な切れ込みの入った広いつば。
    思わず息を飲んだ。忘れもしない、それは小学生の俺が昔じいちゃんに連れられて行った田んぼで失くした麦わら帽子だった。
    立ち尽くす俺の前で男が二、三度唸り声を上げる。俺が逃げ出すよりも、向こうが目を覚ますほうが早かった。
    大丈夫ですか、と話しかけた俺の言葉を遮って男が一言叫ぶ。
    「やっと見つけた!」

    このときの俺はまだ知らない。この男が田んぼの神様ということも、麦わら帽子を返すためにずっと俺を探していたということも。
  • 雪かきの映像を背に海に行こうと誘ってくるような人だった。
    まんまと一緒に乗り込んだ電車の中にひしめき合う顔はようやっと帰路につく安心でむしろ強張っていて、私達だけが腑抜けた顔をしていた。
    「いやー、寒いねぇ」
    へらりと笑う口元はマフラーで見えないけれど、覗く鼻のてっぺんが赤くなっていて、私はその事ばかり気にしていた。

    「やっぱあたし逆張りの女だからさ」
    あはっと笑って砂浜に天使を描く人は、むしろこの季節を誰より謳歌しているように見えた。
    私が持つ端末のライトに照らされて、頬を砂まみれにしたまま翼が生えていそうな無邪気な顔で笑う人が、少し恐ろしかった。
    「ね、このまんまここにいたら朝日とか見れるのかな」
    「……その前に風邪ひくと思うよ」
    「やっぱムリかなあ。方角もわかんないしねぇ」
    あっさりそう言う人が本当に天使で、今降る雪が彼女の羽根だったなら私は物語にするのにと思う。
    彼女が私の空想上の存在である方がきっと納得がいくから。
  • ttps://tters.jp/c/77632 の続き

    (画像1 ヨシダ家集合写真。右上に写るオーブは一体…)

    後輩が死んで1ヶ月。まだ慣れないし慣れたくもない。講義も身が入らずサークルの集まりにも参加せず、俺は彼の故郷、徳島について調べていた。
    8歳になった裕二が如来像に怯えるようになった理由。像を埋めて首を落とした祖母。以降、怯えるのをやめ、食事も摂るようになったという裕二。一見すると、怯えていた対象が消えて気が済んだだけのように感じる。
    だが「如来像を埋め、目の前で首を切り落とす」など、子供の前でやるにはあまりにも配慮が足りていないように思う。
    何か元となる伝承があるに違いない。調べるうちに辿り着いたのは、とある呪術だった。

    (画像2 %$^!寺に祀られていたという の頭蓋骨)

    (画像3 庭の様子。掘り返したが胴体は発見されず)

    (画像57 写真。)

    (写真6 大変申し訳ありません。ヨシダに遭遇された場合、一切対処できません。)
  •  子どもの頃は何にだってなれた。
     世界を救う勇者、万能の料理人、稀代の天才画家、プロ野球の選手。変身マントも、魔法の呪文もいらない。右手に武器を構えるだけで、描いた通りの存在になれたのだ。
     ……結局。十数年のうちに思い知る。俺は救世主にも、万能にも、天才にも、プロフェッショナルにも。なんにもなれない。平和な世の中を、ありきたりな日々を過ごす凡庸な男でしかなかった。

     ――でも、そんな日常を切り裂くように。耳をつんざく産声が響いた。
     情けなく震えていた左手を、もう一度強く強く握りなおす。熱を持ち汗ばんだ掌も、鼻をつく臭いも、気にならないくらいの歓喜が鼓動となって震えた。気づけば、視界が滲んでいた。

    「……あり、がとう、ありがとう」
    「ふ、ふふ……なんであなたが泣いてるのよ」

     くしゃくしゃの顔で笑う妻は、誰よりも強く気高く、美しかった。
     何者でもない俺を、父親にしてくれてありがとう。
     次にこの右手で握ったのは、我が子の小さすぎる手だった。
  • 「ここに、ね」
     腹の上に女が乗っている。武器など一度も手にしたことのないだろう、しなやかで血の通わぬような白い指が。地図でもたどるように胸を擦った。布地を滑るだけのむず痒さに揺らいだ身体に、嘲るような視線が刺さっていた。
    「種を植えるの。そこら辺で拾ったもの。そしたらいったい、どんな花が咲くのかしら」
     女の指は胸の芯を示していた。女の触れた箇所は熱を持つどころか、雪のように冷えている。
     だらりとシーツにおろしたままだった腕を上げて、女の甲に添える。氷のように透き通る肌は金属の温度に似ていた。
    「僕に選べるなら……君が好きな花にしようかな」
    「知らない癖に」
    「教えてくれないのかい?」
    「だめよ、」
     ――もうそんなの、意味ないもの。
     耳元で微かな囁きが響き、そのまま女は消えた。
    「……やっぱり菊か、百合が似合うかな?」
     死んだ女が会いに来てくれるなら、金縛りだってかまわない。いつまでも胸に残る彼女の笑顔は、まだ枯れてくれそうにないのだから。
  • →眠れぬ夜に←

    人間は睡眠時間が大切だ。
    だが、頑張って眠ろうとするほど起きてしまう。

     嘘でも眠るふりで目を瞑ること。
     とりあえず横になり、
     リラックスするのが一番さ。
    散々、医師に話された。試したが眠れずに悩む。

    「無理しないでいいのよ
     夜起きて朝寝ても悪くないでしょう?

    うちの妻は優しい人。戸惑いながらの対応だけど。どうしようもない僕の話を逃げずにきいてくれている。涙腺からやがて一筋の涙が。

    「我慢しないで泣いてもいいのよ? 

    夜明けまでなみだながらに妻と話をするのは何年ぶりだろうか。会話を妻と全くしなかったのは僕。

    「苦しいときもお互いに歩みより、
     未来に進むって誓ったじゃない

    言われて思い出した結婚式の誓い。いつも自分勝手に進んでいた僕。苦しむ時が妻にもあったかも知れない。いい加減な僕は大切な彼女を独りにさせてしまった。堪らなく辛い気持ち。

    「誓うよもう一度
     どんな時も君と歩みより話し合うよ
     良い夫婦に幸せになろうね。
  • ハロルドはいいやつだった。ときどきデリカシーのないことをするけれど、心底嫌われるようなことはしなかった。女にももてたし、男連中もすぐに仲間になった。ハロルドはそんなやつだった。そんなハロルドが、ご自慢のバイクで砂漠を渡ると言ってから、二年経つ。酒場ではたまにハロルドのことが話題になるが、すべて昔話のように聞こえた。ハロルドは存在してたのだろうか。ぼくらが青春というものに抱く幻想に過ぎなかったのではないか。バーボンを飲みながら、たまにそんなことを考える。今夜もハロルドは戻らない。
  • スケッチブック・アイランドでは、住民も旅人もスケッチブックを持たなくてはならない。島に入るときも、身分証明証なんていらない。対応する役人の顔をスケッチして渡せばいいだけだ。市場でリンゴが欲しければ、リンゴをスケッチして渡す。宿に泊まりたければ、宿の外観をスケッチして渡す。求愛するときは相手の顔をスケッチするし、別れるときも相手の顔をスケッチする。島で描かれた何万枚ものスケッチは、スケッチのない島に売られる。スケッチブック・アイランドでスケッチしてはいけないただ一つのもの。それはお金である。
  • ガンかもしれないのに酷い!
    医師の会話を病院できいてしまった。たまらずに妻へ。
    「変更しよう。
     嘘を患者につく医師とは。
     恥じをしれ!劣悪じゃないか!
    「勘違いじゃない?医師が、
     あなたは考えすぎる性格だ
     と言っていたわ?私もそう思うの。
    「呑気なことを言うな!
     なんと酷い医師。信用できない!

    いい医師を探しに行かなくちゃ。ヤブ医者はもうこりごり。隣人の勧めで別の医師に手紙を書いて、早速出す。
    直ぐに返事が。

    「ガンですか、先生?
     今、私はかなり苦しいです。
     すぐに治してください。
     医者ならできるはず。

    ずっと黙って様子を見ていた医師が小さな瓶を出した。試しに2週間、食後に。
    ニオイはなく、透明な薬が。

    「ガンに効くと思えないですけど。
     どういったものですか?
    「軽い疲れの症状ですよ、
     良く眠りしっかり休んで下さい。
     いいですか、勘違いでガンと
     思ってしまうのは病ではなく
     性格なんです。
     すでに別の医師が病院で
     あなたへ話したはずですが。
  • 牛の王が北の草原から一族を連れて村に来てから一年以上が経つ。村人は最初戸惑っていたが、牛の一族もとくに悪さをするわけでもないので、だんだんと気にしなくなった。牛の王も、なにも威張り散らすことなく、ただ黙々と空き地の草などを食むばかりだった。こどもたちは、牛たちに石を投げたり、水をかけたり、そんな悪戯をしたりもする。それでも牛たちは、しっぽを振るくらいで、とくに反応しない。こどもたちもすぐに飽きて、それぞれの遊び場に戻っていった。
    ある日、牛の王が村長に「西の親族を連れてきてもいいか」と尋ねた。
    村長は「べつに構わんが、増え過ぎたらあんたらにはこの村が狭くなるんじゃないかね」と答えた。
    「そうか」と牛の王。
    翌朝、村からは一頭の牛もいなくなっていた。牛たちは北の草原に帰ったという者もいれば、べつの村に向かったという者もいる。だれも牛たちの行方を知らない。村人たちは、牛なんてもとから来なかったのように、生活に、戻る。
  • 向日葵が一輪咲いている。
    梅雨のはじめだというのに。

    僕の家の側に空き地がある。元は田圃だったのだろうが今は放置されて草だらけだ。

    しかし誰が植えているのか、夏は向日葵が咲き秋はコスモスが咲く。
    毎年随分と綺麗に咲くものだから、側を通る時にはつい目を奪われてしまう。

    今は6月。ジメジメとした梅雨の季節。
    空き地の向日葵達は茎を伸ばし葉をつけて、静かに夏の訪れを待っている。

    そんな中、一輪だけ既に立派な花を咲かせていた。

    僕は思わずその向日葵に釘付けになる。
    他と少し離れた場所に咲いていた。
    太陽のような明るい顔で、ひとりじっと曇天を見上げている。

    これから本格的に梅雨入りだ。
    向日葵を見てこんなに寂しい気持ちになるのは初めてだ。
    向日葵に憂鬱な雨は似合わない。夏の眩しい太陽こそが似合う。

    「大変な時に咲いてしまったな」
    僕は儚い気持ちになり、心の中でそっとエールを送った。
    早咲きの向日葵が梅雨の重さに負けず懸命にに咲く──その姿をさいごまで見届けようと決めた。
  • 俺のばあちゃんは魔女だ。
    たとえば天気。ばあちゃんは空を見てすぐその日の天気がわかる。しかもテレビよりも正確だ。

    たとえば料理。ばあちゃんの作る料理は神懸かってうまい。同じように作っても誰もばあちゃんの味を出せない。

    たとえば話し方。
    ばあちゃんがケンカの仲裁に入ると、ケンカしてた人は皆なぜかケンカする前より仲良くなる。
    ばあちゃんに相談にのってもらった人は笑顔で帰っていく。

    たとえばお別れ。
    最後の日、ばあちゃんは家族皆に「今までありがとうね、大好きよ」と言って、その日の夜に心臓発作でなくなった。
    俺たちのばあちゃんは、愛すべき魔女だ。
  • 「ど、どうしたんだこんな…こんなに痩せ細って…!!しばらく会わない内に何があったんだよ…!!」

    僕は君に会うのを本当に楽しみにしてたんだ。
    変わらない姿、懐かしい香り、優しい思い出。
    しかしそれは、束の間の幻想だった。

    小分けの袋を開けて出てきたミニミニミニサイズの君に、僕は膝から崩れ落ちて泣いた。3時のおやつに楽しみにしてたのに…
  • ディア、ここにはいない君。世界の鮮やかさを僕に刻み込んでいなくなった事、どう責任を取るんだい?たとえ世界が救われたって、君がいなかったらハッピーエンドじゃないんだよ。今からその檻をぶち壊しに行くから、心して待っていて。フロム諦めの悪い僕。
  • 即興のバイオリン、タンバリン、マンドリン。音と音とが重なりあい、響きあい、弾きあった。音楽のなかに僕はいて、僕の中に音楽はあった。みなは踊り狂い、狂気のなかに踊りはあった。僕は僕のソプラノリコーダーを吹きまくり、音は外れて宇宙に飛び去った。飛び去った音は音速を超えた。遠くエウロパまで届いたその音に、彼らもまた反応した。彼らは微弱な電波をこの地球に送り返した。
    「コンニチハ、コンニチハ、ゴキゲンデスネ」
    その電波が届くころには、僕らはみんな年老いて安楽椅子に座っていた。手を伸ばしても届くのは月。月光楽団が今宵もすてきなメロディを奏でる。僕らは少しだけ身を揺らす。
  • 「つまらない夜だ。」
    ──つい、口をついて出た言葉。そういえば昨夜も思っていたことであった。
    毎晩毎晩酒を飲めば極上の快楽に溺れられるかと思えばそうでもない。毎晩のように飲み続けると酔っ払おうにも、ついに際限が来る。
    「なんだ、こんな夜。」「つまらないものだ。」そんな所在無さをあらわす言葉しか脳裏に浮かばなくなるのだ。
    この苦しみは、読者諸君には到底分かるまい。
    いいのだ、いいのだ。
    私の理解者は私ひとりいれば充分過ぎるくらいなのだ。
    窓の外は煩いほどの雷雨。いやしかし、窓を閉めてテレビをつければ何ということもない。
    こうして私は永遠に私の作った世界に私だけを幽閉して生きていけば、どうということはないのだ。
    そう。
    どうということはないのだ。
  • なんでも作り屋を名乗って幾星霜、変な注文ばかり入る。赤ちゃんが入る特大サイズの桃だの、開けたら死ぬ10日前の年齢になる箱だの、片方だけサイズが大きめのガラスの靴、空を飛ぶようのソリ、地面にぶっ刺したら最後決まった人間にしか引き抜けない剣とか。

    人間の要求には際限がない。
    つい数日前には唐揚げの大量注文が入った。いや唐揚げ屋行けよ。