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小説書いったー
小説書いったー
2022年5月28日に作成
#趣味
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420文字以内の小説を書きたい読みたい人向け
・一次創作のみでお願いいたします。
・ジャンルは冒頭か返信部分に書くとわかりやすいですがなくても問題ありません。
※現在、改行を使った420文字小説の場合、文字数オーバーでエラーが出るようです。
お手数をおかけしますが、文字数だけではなく改行も1文字とカウントして420文字以内になるよう調整して頂けると助かります。
#小説
#しょうせつ
#420文字小説
#読書
#創作
#息抜き
このTterはアーカイブのみ閲覧できます
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pKDyVm
2022年9月15日
息の仕方がわからなくなる、どこを走ってるのか、そもそもこの先に救いはあるのかすらわからない。そんな中でもわかるのは、背後から迫る闇に捕まったら終わるのと、それから逃げている自分ともう一人の子供がいることだった。
精神を病み、田舎町で療養することになった自分は、古ぼけたバス停の中でとある子供と知り合った。子供曰く、町には爺婆しかいないそう。年齢が近い自分が来て嬉しいとはにかんだ笑顔が印象的だ。
随分と遅れたバスに乗り込んで、心地よい揺れに寝てしまったのがまずかったのか。気がついたら見知らぬ館にいて、闇に追いかけられるこの始末。すぐに出なければと急くが、館全体が迷路のようになっておりどうにもならない。
漸く館の出口を見つけ、必死に走る。光が見えた。大丈夫、助かるから、と口に出す。
「あ、」
子供が声を上げる。振り返ると、その子は半身を闇にのまれていて、それで。
「ごめんね」
子供はバス停の中で見せた笑顔を向けた。自分の手を離して、
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Sw8Ehu
2022年9月13日
ついつい
「先日、この先にあるお店でね、パンが割引セールだったから、ついつい。」
「わかるわ、私も割引あると、ついついね。
「買ったの?
「少し迷うけど、ついつい。
「そう、周りが買ってるといいかなって、ついついね。
「パン好きなの?
「あまりパンは食べないけど、たまには味見で、ついつい。
「うん、手軽なサイズだと丁度よいオヤツで2、3個、ついついね。
「たくさん食べたの?
「小腹にはお手頃だしね、ついつい。
「別腹で、ついついね。
「美味しかったの?
「何にでも言っちゃうのよね、珈琲にもあうと、ついつい。
「皆の手前、ついついね。
「このお店?
「そうよ、あら。
「セール終わったわね。
「それで。今日、買うの?
『それは、ない。』
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CUKkM1
2022年9月13日
【影】
ヒタヒタと後ろをついてくる足音がする。
立ち止まると後ろの音も止まる。
歩き出すと、またヒタヒタと音が聞こえる。
ずっと何かがついて来ている。
後ろを何度も何度も振り向く。姿は見えない。
足を少し速めると、ヒタヒタヒタヒタとついてくる。
怖くて怖くて、どこまでも逃げて逃げて逃げて。
ある時ふと気づく。
逃げる事はできないのだと。
立ち止まって顔を上げれば、影を濃く作り出す光が頭上に輝いている。歩き出すと、またヒタヒタと音がした。
ゆっくりと歩んでいく。
恐怖はどこかに去っていた。
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toxABo
2022年9月10日
「毎日お疲れさん」
とある酔っ払いがチューハイ片手に月に乾杯した。殺風景なアパートのベランダに腰掛け、袋に手を突っ込んでガサガサと音をならす。
個包装の袋を破くと、まん丸な黄色い飴をつまみあげて月に重ねた。本物の月は、飴と違って完璧な円ではないらしい。それもまた一興。
ただの飴が、月の光を浴びてまるで月のかけらのようだ。小さな飴を口に放り込むと、爽やかな甘さと酸味が広がった。目を閉じて月光を浴びながら、酔っ払いの夜は更けていく。飼い猫がミャアと鳴きながら頭を擦り付けてきた。なめらかな感触が手に心地いい。
「幸せって、案外こういう事かもしれないね」
満ち足りていると思えば満ち足りているし、欠けていると思えば欠けている。どちらにしろ今夜の満月はとても美しく、月のかけらは甘い余韻を残して溶けた。
読み込み中...
h.vrF7
2022年9月10日
去っていく金曜日の名残
駆けていく土曜日の始まり
道端の猫が見つめている
おはようオニヤンマ
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XNopCz
2022年9月9日
『赤いチューリップ』
庭先に、赤いチューリップが咲いた。
もうすぐ秋になるというのに季節外れなチューリップもいたものだ、と眺めていると、チューリップが私に語りかけてきた。
「あなたを守りたいの」
小さな声で彼女はそう囁く。
真っ赤な彼女の小さな体は、冷たい雨や夏の名残の強すぎる日差しに日々弱っていくように見えた。
こんな小さな動けない体で、彼女は私の何を守ろうと言うのだろう。甚だ疑問であった。
「あなたが大好きよ」
毎日、チューリップは私に小さな声で愛を告げる。
開ききった花びらが落ちて、いよいよ最後の一枚になった時、彼女は弱々しい声でそっと私に言った。
「私はこれから眠りにつくけれど、ずっと貴方のことを忘れないわ。大好きよ」
それから、彼女が私に語りかけてくる事は二度となかった。私の心には今も赤い美しい花が咲き続けている。
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ltOfQQ
2022年9月8日
小説書けないのでごめんなさいですが保守させてください…
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ebuDai
2022年9月6日
3022年、9月6日。
僕は空を見上げて遠くの故郷を思う。
僕たちの星はかつて青く美しい星だった。
今では見る影もなく、汚染され続けた星は枯れてしまった。あの星は今、ただひたすら荒涼とした大地が広がっているそうだ。映像だけは流れてくるけれども、地球はもはや居住のできる惑星ではなくなってしまった。
僕たちは地球から月へ、火星へ、そして今はまた新しく発見された星への移住計画が組まれている。
記憶というデータだけを引き継ぎながら、とてもとても小さな機械の体で僕たちは生き続けている。
僕らはどこに辿り着き、どこで果てるのだろう。
砂塵の舞う赤い空を見上げる。
宝石のような青い星に還りたい。
「ジージジジージルルルジル(うわキモ、虫入ってきてんじゃん)」
僕の体は火星の先住民に踏み潰された。
読み込み中...
zex0Dq
2022年9月4日
新幹線の中に、小さな影がひとつ。
シートに座り、ブラブラと足を揺らす少女に、車掌が近づいた。
「お嬢ちゃん、どこから来たのかな?お父さんやお母さんはどこにいるの?」
少女は車掌をじっと見つめた後、軽く首を振ってこたえる。
「新幹線に乗るなら、お金を貰わなくちゃいけないんだけどね...
そもそも、どうやって入ったのかな?」
車掌の話をぼんやりと聞いていた少女が、"お金"という言葉にだけぴくりと反応した。
ゴソゴソとポケットをあさり、中からキラキラと輝きを放つ宝石を取りだす。
「これ、ダメ?」
そう言って、車掌の手に押し付ける。
車掌は暫く放心した後、いやらしくにやりと笑って尋ねた。
「他には、ないの?」
「これだけ」
車掌は乱雑に宝石をポケットに押し込み、本当は足りないけれど、仕方がないからこれでいいよ、と残してその場を去った。
眠らない都市、東京で、「本屋にたぬきが出た」と話題になったのは、その数時間後のことである。
読み込み中...
3dablm
2022年9月4日
「ブルーモーメント」
濃い青い空の写真のタイトルにはそうつけられていた。仕事帰りにふらりと入った写真展で私はその写真から目が離せずにいた。
学生時代友人と帰り際飽きもせず話し込んでいたのを思い出す。そうか、私たちがきれいな色だねって言っていた空はブルーモーメントというのか。
ポストカードを買って外へ出る。早速ブルーモーメントをネットで検索するとたくさんの画像やブログなどが出てきた。実に単純だが自分でも写真を撮りたいなと思い始める。駅へ向かう道のりではもうブルーモーメントは見られなかったが、南の空に浮かんでいた上弦の月が日暮れとともに色濃くなっていた。
「あ、もしもし?ねえ今度の日曜日買物に付き合ってほしいんだけど時間ある?」
家に帰りポストカードを眺めながら友人へ電話する。カメラを買いに行きたいと誘ったのだが、なんか会いたくなっちゃった、というのが本心なのは内緒にしておくつもりだ。
読み込み中...
F9SGyT
2022年9月3日
誰もが羨む理想の夫婦となった私と貴方。
ほら見て、沢山の人が私達を「お似合い」と賞賛している。
当然のことよね。
あなたの事を、何時だって、何処にいたって一途に愛し、慈しみ、大切に思い続ける私。
照れ屋さんで素直じゃないけどとっても優しくて、ひた隠しにする心の底では、誰より私を愛する貴方。
まるで運命のように、私達は導きあって、惹かれあって、出会い、結ばれたの。
私がひたすら書きあげ、積み上げたこの小説こそがその証。
私と貴方の出会いから、そしてこれまでを描いた物語。
でも一旦終わりにしなきゃ。
貴方の移住先の近くに、私も行かなきゃいけないものね。
貴方のお隣さんから聞いたわ。
次は海の近くに住むんですってね。
警察署が傍にあって、治安も良くって、安心ね。
私のためを思ってくれたんでしょう?
私にはわかるのよ、小説家だもの。
あなたの遠回しな愛情表現一つ読み解けないようじゃ、仕事にならないじゃない?
やっぱりあなたと私って、とっても似合いの夫婦よね。
読み込み中...
E2jR9V
2022年9月1日
タコ焼
今、僕はオッサンだ。両親はもういない。人生を振り返る。
5歳頃、料理人のパパが作ってくれた、粉とキャベツのタコ焼。僕は本物が欲しいとゴネて泣いた。3年後、両親が喧嘩。パパが家を出た。
「ママを頼んだ。戻ってきたら、必ずタコ焼、食わせてやるからな」
ママは、きっと帰ってくるわ、と寂しそうに笑った。
この日。僕は、ワガママが人の人生を狂わせ、幸せを壊すことを知った。僕の願いなのだから、僕は自分でタコ焼を作ればいい。
〜タコ焼現代史〜
2048年
オッサン誕生
2050年
タコ焼、世界的流行
タコ、希少に。イカ偽装事件
イカ入りはタコ焼風と明記
タコ養殖盛ん
2052年
タコ焼職人技が国家資格になる
受験資格は大阪で修行3年後
全国のお祭り屋台100日実務が条件
2065年
タコ焼連合発足、本部は大阪城
2085年
大阪の元祖屋台のタコ焼、三ツ星に
2100年
屋台のオッサン、文化功労賞受賞
式典の一言
『混ぜこぜ人生、周り巡り、俺もすっかり丸くなりました』
読み込み中...
Zjncwl
2022年8月30日
「騒音騒ぎしか起こせないくせに、何が夏の風物詩だ」
人間に飼い慣らされ、言われるがまま相撲をとるあいつらが、俺達に向けて放った言葉。
ゲージの中で甘い汁を啜り、ふかふかの土に埋もれ、偽りの野生に騙され、本能と勘違いして目の前の敵と戦う。
愚かなのはお前らだ、情けないのはお前らだ。
そう罵りたい気持ちは、いつだって人間を沸き立たせ、人間の誇りとなるあいつらを前にして消えていった。
俺達には何がある?
俺たちに何が出来る?
1週間しかない短い命の中で、俺たちにできること。
あいつらを見返せる何か。
必死に考え、悩み抜いて、そして見つけた"答え"。
──男子シングル、セミファイナル
アナウンスとともに空を駆ける。
人間に放つ決死の一撃。
カブトなどにはなし得ない、俺たちの"騒音"と、1週間の全てを込めた急上昇。
飼われるがままのお前らとは違う。
これが、短い命を生きる俺たちの、"誇り"だ。
読み込み中...
u27LTt
2022年8月30日
幸せな常識
新婚から早くも3年。
会社の急な出張。
妊娠中の嫁に家庭を省みないと
言われ冷戦。
僕だって手伝いたい。
だけど今、僕が稼がなきゃ。
医師の話では、妊娠中は
体の負担がすごいらしい。
嫁と子供に何かあったら大変だ。
帰りに道に迷う。
小さなパン屋を見つけた。
道を教えていただいた
お礼ついでにパンを買ったら
試作品をオマケでいただいた。
名前は幸せなパン。
嫁とふたりで食べようと
持ち帰る。
「パン、楽しみだね」
嫁が喜び、僕も嬉しい。
幸せなパン。
確かにちょっと幸せだ。
手で半分にしたら
小さいオッサンが出てきた。
ネクタイにスーツ。頭をペコリ。
慌ててこちらもペコリ。
オッサンは小さな鞄から
折りたたんだ紙を出して
渡してきた。
紙を広げて見る。
「ハズレです」
嫁と顔をあわせハテナ?
再びパンを見たら、
オッサンは消えていた。
パンのおかげで
久々に嫁と会話が弾む。
幸せなパン。
そうだよな。
彼女の笑顔が僕の幸せ。
僕たちは会話を楽しみ
笑顔でパンを
ゴミ箱に捨てた。
読み込み中...
BnbjFo
2022年8月28日
ドリームアイドルフェスティバル決勝戦、本番1分前。対戦相手のステージを見守りながら、俺は出番を待っていた。
彼のステージは何もかもが完璧だった。メリハリの効いたダンスに安定した歌声。
終わった後の歓声は、舞台裏にまで響き渡っていた。
ふと、自分の掌に目を向ける。指先は頼りなく震え、心臓が早鐘を打つ。
大丈夫、大丈夫。迷いを断つようにぎゅっと掌に力を込める。
練習はやれるだけやって、苦手な振付もしつこいくらい確認したんだ。
あとは今日に懸ける思いを、僕自身の全力で表現するだけ。
登場アナウンスがかかり、俺はステージへ進む。
ーワアアアアッ!!!!!
顔を上げると、観客は一層大きく轟いた。
「さぁ、ここからは俺の時間だ。絶対に目を離すなよ?」
読み込み中...
ngum0I
2022年8月28日
「今日は少し涼しいな」
僕はぼつりと呟いた。
今年の夏は暑かった。一歩外に出ればぎらぎらと太陽が照りつけ、湿度の高い熱風が体を包み、容赦なく蒸し焼きにされるようだった。
そんな暑さもこの数日は少しだけ和らいだ。頬を撫でる風は涼やかだ。
「宿題終わった?」
「まだ!やばい!」
2学期を真近に控えた小学生が、大きな声で会話しながら通り過ぎる。
耳をすませば近所の軒先に吊られた風鈴が、風に揺れてチリンと切なげな音を響かせている。
青いプランターに植えられた観察日記用の朝顔は、しわくちゃになって枯れている。
太陽に向かっていきいきと背を伸ばしていた向日葵は、茶色くなって頭を垂れている。
トンボが一匹僕の体を掠めた。
空を見上げると真っ青な空に入道雲が立ち込めている。
まだ夏が生きていた。
夏の終わりはどこか寂しい。
強烈な暑さを振りまいていたのに、終わるときだけしおらしいのが憎らしい。
もうすぐ8月も終わる。
空をじっとみていると、夏に吸い込まれるような感覚を覚えた。
読み込み中...
WrU.e0
2022年8月26日
漫画喫茶の片隅、私は濁った目で背中を丸め、カップ麺をすすっていた。
コツコツと靴を鳴らし、真っ黒なスーツを着た老人が歩いてくる。老人は大柄で目つきの悪い男を従え、突然私のいる個室へ入ってきた。
私はろくに抵抗もできず、怪しげな薬を嗅がされぐったりとする。大柄な男が私を肩に担ぐと、老人と男はそのまま漫喫の出口まで来て店員の男に小さく頷いていた。どうやら店員もグルのようだ。
次に私が目覚めたのは、どこかも分からぬ田舎の一軒家であった。訳もわからぬまま農家での暮らしが始まり、脱走してもすぐに大男に捕まってしまう。ここには何人もの人々が私と同じように捕まっていた。
修行という名の洗脳を終えた者は黒いスーツで「仲間」を増やす為に奔走する。黒い手袋をしたその手に握られた数十枚のビラには同じ文言が書かれていた。
『サンタクロース養成所。夏はブラックサンタとして新人発掘を行なっています。アットホームな会社です♪やりがいのある職場です。』
読み込み中...
P.plMS
2022年8月25日
――何を守りたい?
女は男に問う。風に吹かれる黒髪がさらさらと音を立てているようだった。
薄汚れたガードレールに腰かける女は、ねぇと重ねて問いかける。
「きみは、何を守りたい?」
この星の未来?親に見捨てられた子猫?それとも、大切な誰か?
どこか弾んだ声音は子どもの無邪気さを思わせた。トン、と地面に足を付けば、白いワンピースの裾が揺れる。
「僕は、きみを護りたい」
女が手のひらの汚れを払うために俯いた頭上に、男の声が降った。
驚いた様子で男を見上げた女は、やがて不器用に笑う。
「あはっ、やっぱりきみは優しいんだねぇ。……いま、お別れの話してたのにさ」
再び俯いた女の手を男は黙って握った。
「私を護っちゃったらさ。この星も、親に見捨てられた子猫も、きみの大切な誰かも……ぜんぶ、死んじゃうんだよ」
泣き出しそうな声が男を止めようと訴える。その、震える肩を男は抱いた。
「……僕は、きみのこともこの星も全部護るから」
そうして、決して叶えられない誓いを立てたのだ。
読み込み中...
yrD9SD
2022年8月22日
最近、家族に違和感がある。パパもママも優しい。厳しいときもあるけど、嫌いじゃない、だけど。
本当の子どもじゃないんだって、鏡を見て思った。似てない。お姉さんに話したら、今更なによ、とため息された。
部屋にある大きな鏡。嫌な現実を浮き彫りにする。僕はがんばってもパパ・ママのようになれない。どうしてこんな姿に生まれたんだよ。努力したって無理だよ。家から出たほうがいいのかもしれない。ドアノブを見つめ、悲しくなった。
扉があく。入ってきたパパに思わず飛びついた。ママが驚いてる。だけど、僕はなくしかできなくて。
「具合が悪いのかい。明日、病院行くか?」
「ごめんね、わからなくて。私たちも猫だったら、良かったのに」
「人間も猫も、親子はそんなものかもな」
お姉さんが、ニャーとないた。そうか。お姉さんもだったんだね。パパ・ママもみんな、同じ悩みをしていたんだ。
僕は猫で、猫と人間の家族がいる。姿や血は関係ない。この家族を大切にしようと思った。
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精神を病み、田舎町で療養することになった自分は、古ぼけたバス停の中でとある子供と知り合った。子供曰く、町には爺婆しかいないそう。年齢が近い自分が来て嬉しいとはにかんだ笑顔が印象的だ。
随分と遅れたバスに乗り込んで、心地よい揺れに寝てしまったのがまずかったのか。気がついたら見知らぬ館にいて、闇に追いかけられるこの始末。すぐに出なければと急くが、館全体が迷路のようになっておりどうにもならない。
漸く館の出口を見つけ、必死に走る。光が見えた。大丈夫、助かるから、と口に出す。
「あ、」
子供が声を上げる。振り返ると、その子は半身を闇にのまれていて、それで。
「ごめんね」
子供はバス停の中で見せた笑顔を向けた。自分の手を離して、
「先日、この先にあるお店でね、パンが割引セールだったから、ついつい。」
「わかるわ、私も割引あると、ついついね。
「買ったの?
「少し迷うけど、ついつい。
「そう、周りが買ってるといいかなって、ついついね。
「パン好きなの?
「あまりパンは食べないけど、たまには味見で、ついつい。
「うん、手軽なサイズだと丁度よいオヤツで2、3個、ついついね。
「たくさん食べたの?
「小腹にはお手頃だしね、ついつい。
「別腹で、ついついね。
「美味しかったの?
「何にでも言っちゃうのよね、珈琲にもあうと、ついつい。
「皆の手前、ついついね。
「このお店?
「そうよ、あら。
「セール終わったわね。
「それで。今日、買うの?
『それは、ない。』
ヒタヒタと後ろをついてくる足音がする。
立ち止まると後ろの音も止まる。
歩き出すと、またヒタヒタと音が聞こえる。
ずっと何かがついて来ている。
後ろを何度も何度も振り向く。姿は見えない。
足を少し速めると、ヒタヒタヒタヒタとついてくる。
怖くて怖くて、どこまでも逃げて逃げて逃げて。
ある時ふと気づく。
逃げる事はできないのだと。
立ち止まって顔を上げれば、影を濃く作り出す光が頭上に輝いている。歩き出すと、またヒタヒタと音がした。
ゆっくりと歩んでいく。
恐怖はどこかに去っていた。
とある酔っ払いがチューハイ片手に月に乾杯した。殺風景なアパートのベランダに腰掛け、袋に手を突っ込んでガサガサと音をならす。
個包装の袋を破くと、まん丸な黄色い飴をつまみあげて月に重ねた。本物の月は、飴と違って完璧な円ではないらしい。それもまた一興。
ただの飴が、月の光を浴びてまるで月のかけらのようだ。小さな飴を口に放り込むと、爽やかな甘さと酸味が広がった。目を閉じて月光を浴びながら、酔っ払いの夜は更けていく。飼い猫がミャアと鳴きながら頭を擦り付けてきた。なめらかな感触が手に心地いい。
「幸せって、案外こういう事かもしれないね」
満ち足りていると思えば満ち足りているし、欠けていると思えば欠けている。どちらにしろ今夜の満月はとても美しく、月のかけらは甘い余韻を残して溶けた。
駆けていく土曜日の始まり
道端の猫が見つめている
おはようオニヤンマ
庭先に、赤いチューリップが咲いた。
もうすぐ秋になるというのに季節外れなチューリップもいたものだ、と眺めていると、チューリップが私に語りかけてきた。
「あなたを守りたいの」
小さな声で彼女はそう囁く。
真っ赤な彼女の小さな体は、冷たい雨や夏の名残の強すぎる日差しに日々弱っていくように見えた。
こんな小さな動けない体で、彼女は私の何を守ろうと言うのだろう。甚だ疑問であった。
「あなたが大好きよ」
毎日、チューリップは私に小さな声で愛を告げる。
開ききった花びらが落ちて、いよいよ最後の一枚になった時、彼女は弱々しい声でそっと私に言った。
「私はこれから眠りにつくけれど、ずっと貴方のことを忘れないわ。大好きよ」
それから、彼女が私に語りかけてくる事は二度となかった。私の心には今も赤い美しい花が咲き続けている。
僕は空を見上げて遠くの故郷を思う。
僕たちの星はかつて青く美しい星だった。
今では見る影もなく、汚染され続けた星は枯れてしまった。あの星は今、ただひたすら荒涼とした大地が広がっているそうだ。映像だけは流れてくるけれども、地球はもはや居住のできる惑星ではなくなってしまった。
僕たちは地球から月へ、火星へ、そして今はまた新しく発見された星への移住計画が組まれている。
記憶というデータだけを引き継ぎながら、とてもとても小さな機械の体で僕たちは生き続けている。
僕らはどこに辿り着き、どこで果てるのだろう。
砂塵の舞う赤い空を見上げる。
宝石のような青い星に還りたい。
「ジージジジージルルルジル(うわキモ、虫入ってきてんじゃん)」
僕の体は火星の先住民に踏み潰された。
シートに座り、ブラブラと足を揺らす少女に、車掌が近づいた。
「お嬢ちゃん、どこから来たのかな?お父さんやお母さんはどこにいるの?」
少女は車掌をじっと見つめた後、軽く首を振ってこたえる。
「新幹線に乗るなら、お金を貰わなくちゃいけないんだけどね...
そもそも、どうやって入ったのかな?」
車掌の話をぼんやりと聞いていた少女が、"お金"という言葉にだけぴくりと反応した。
ゴソゴソとポケットをあさり、中からキラキラと輝きを放つ宝石を取りだす。
「これ、ダメ?」
そう言って、車掌の手に押し付ける。
車掌は暫く放心した後、いやらしくにやりと笑って尋ねた。
「他には、ないの?」
「これだけ」
車掌は乱雑に宝石をポケットに押し込み、本当は足りないけれど、仕方がないからこれでいいよ、と残してその場を去った。
眠らない都市、東京で、「本屋にたぬきが出た」と話題になったのは、その数時間後のことである。
濃い青い空の写真のタイトルにはそうつけられていた。仕事帰りにふらりと入った写真展で私はその写真から目が離せずにいた。
学生時代友人と帰り際飽きもせず話し込んでいたのを思い出す。そうか、私たちがきれいな色だねって言っていた空はブルーモーメントというのか。
ポストカードを買って外へ出る。早速ブルーモーメントをネットで検索するとたくさんの画像やブログなどが出てきた。実に単純だが自分でも写真を撮りたいなと思い始める。駅へ向かう道のりではもうブルーモーメントは見られなかったが、南の空に浮かんでいた上弦の月が日暮れとともに色濃くなっていた。
「あ、もしもし?ねえ今度の日曜日買物に付き合ってほしいんだけど時間ある?」
家に帰りポストカードを眺めながら友人へ電話する。カメラを買いに行きたいと誘ったのだが、なんか会いたくなっちゃった、というのが本心なのは内緒にしておくつもりだ。
ほら見て、沢山の人が私達を「お似合い」と賞賛している。
当然のことよね。
あなたの事を、何時だって、何処にいたって一途に愛し、慈しみ、大切に思い続ける私。
照れ屋さんで素直じゃないけどとっても優しくて、ひた隠しにする心の底では、誰より私を愛する貴方。
まるで運命のように、私達は導きあって、惹かれあって、出会い、結ばれたの。
私がひたすら書きあげ、積み上げたこの小説こそがその証。
私と貴方の出会いから、そしてこれまでを描いた物語。
でも一旦終わりにしなきゃ。
貴方の移住先の近くに、私も行かなきゃいけないものね。
貴方のお隣さんから聞いたわ。
次は海の近くに住むんですってね。
警察署が傍にあって、治安も良くって、安心ね。
私のためを思ってくれたんでしょう?
私にはわかるのよ、小説家だもの。
あなたの遠回しな愛情表現一つ読み解けないようじゃ、仕事にならないじゃない?
やっぱりあなたと私って、とっても似合いの夫婦よね。
今、僕はオッサンだ。両親はもういない。人生を振り返る。
5歳頃、料理人のパパが作ってくれた、粉とキャベツのタコ焼。僕は本物が欲しいとゴネて泣いた。3年後、両親が喧嘩。パパが家を出た。
「ママを頼んだ。戻ってきたら、必ずタコ焼、食わせてやるからな」
ママは、きっと帰ってくるわ、と寂しそうに笑った。
この日。僕は、ワガママが人の人生を狂わせ、幸せを壊すことを知った。僕の願いなのだから、僕は自分でタコ焼を作ればいい。
〜タコ焼現代史〜
2048年
オッサン誕生
2050年
タコ焼、世界的流行
タコ、希少に。イカ偽装事件
イカ入りはタコ焼風と明記
タコ養殖盛ん
2052年
タコ焼職人技が国家資格になる
受験資格は大阪で修行3年後
全国のお祭り屋台100日実務が条件
2065年
タコ焼連合発足、本部は大阪城
2085年
大阪の元祖屋台のタコ焼、三ツ星に
2100年
屋台のオッサン、文化功労賞受賞
式典の一言
『混ぜこぜ人生、周り巡り、俺もすっかり丸くなりました』
人間に飼い慣らされ、言われるがまま相撲をとるあいつらが、俺達に向けて放った言葉。
ゲージの中で甘い汁を啜り、ふかふかの土に埋もれ、偽りの野生に騙され、本能と勘違いして目の前の敵と戦う。
愚かなのはお前らだ、情けないのはお前らだ。
そう罵りたい気持ちは、いつだって人間を沸き立たせ、人間の誇りとなるあいつらを前にして消えていった。
俺達には何がある?
俺たちに何が出来る?
1週間しかない短い命の中で、俺たちにできること。
あいつらを見返せる何か。
必死に考え、悩み抜いて、そして見つけた"答え"。
──男子シングル、セミファイナル
アナウンスとともに空を駆ける。
人間に放つ決死の一撃。
カブトなどにはなし得ない、俺たちの"騒音"と、1週間の全てを込めた急上昇。
飼われるがままのお前らとは違う。
これが、短い命を生きる俺たちの、"誇り"だ。
新婚から早くも3年。
会社の急な出張。
妊娠中の嫁に家庭を省みないと
言われ冷戦。
僕だって手伝いたい。
だけど今、僕が稼がなきゃ。
医師の話では、妊娠中は
体の負担がすごいらしい。
嫁と子供に何かあったら大変だ。
帰りに道に迷う。
小さなパン屋を見つけた。
道を教えていただいた
お礼ついでにパンを買ったら
試作品をオマケでいただいた。
名前は幸せなパン。
嫁とふたりで食べようと
持ち帰る。
「パン、楽しみだね」
嫁が喜び、僕も嬉しい。
幸せなパン。
確かにちょっと幸せだ。
手で半分にしたら
小さいオッサンが出てきた。
ネクタイにスーツ。頭をペコリ。
慌ててこちらもペコリ。
オッサンは小さな鞄から
折りたたんだ紙を出して
渡してきた。
紙を広げて見る。
「ハズレです」
嫁と顔をあわせハテナ?
再びパンを見たら、
オッサンは消えていた。
パンのおかげで
久々に嫁と会話が弾む。
幸せなパン。
そうだよな。
彼女の笑顔が僕の幸せ。
僕たちは会話を楽しみ
笑顔でパンを
ゴミ箱に捨てた。
彼のステージは何もかもが完璧だった。メリハリの効いたダンスに安定した歌声。
終わった後の歓声は、舞台裏にまで響き渡っていた。
ふと、自分の掌に目を向ける。指先は頼りなく震え、心臓が早鐘を打つ。
大丈夫、大丈夫。迷いを断つようにぎゅっと掌に力を込める。
練習はやれるだけやって、苦手な振付もしつこいくらい確認したんだ。
あとは今日に懸ける思いを、僕自身の全力で表現するだけ。
登場アナウンスがかかり、俺はステージへ進む。
ーワアアアアッ!!!!!
顔を上げると、観客は一層大きく轟いた。
「さぁ、ここからは俺の時間だ。絶対に目を離すなよ?」
僕はぼつりと呟いた。
今年の夏は暑かった。一歩外に出ればぎらぎらと太陽が照りつけ、湿度の高い熱風が体を包み、容赦なく蒸し焼きにされるようだった。
そんな暑さもこの数日は少しだけ和らいだ。頬を撫でる風は涼やかだ。
「宿題終わった?」
「まだ!やばい!」
2学期を真近に控えた小学生が、大きな声で会話しながら通り過ぎる。
耳をすませば近所の軒先に吊られた風鈴が、風に揺れてチリンと切なげな音を響かせている。
青いプランターに植えられた観察日記用の朝顔は、しわくちゃになって枯れている。
太陽に向かっていきいきと背を伸ばしていた向日葵は、茶色くなって頭を垂れている。
トンボが一匹僕の体を掠めた。
空を見上げると真っ青な空に入道雲が立ち込めている。
まだ夏が生きていた。
夏の終わりはどこか寂しい。
強烈な暑さを振りまいていたのに、終わるときだけしおらしいのが憎らしい。
もうすぐ8月も終わる。
空をじっとみていると、夏に吸い込まれるような感覚を覚えた。
コツコツと靴を鳴らし、真っ黒なスーツを着た老人が歩いてくる。老人は大柄で目つきの悪い男を従え、突然私のいる個室へ入ってきた。
私はろくに抵抗もできず、怪しげな薬を嗅がされぐったりとする。大柄な男が私を肩に担ぐと、老人と男はそのまま漫喫の出口まで来て店員の男に小さく頷いていた。どうやら店員もグルのようだ。
次に私が目覚めたのは、どこかも分からぬ田舎の一軒家であった。訳もわからぬまま農家での暮らしが始まり、脱走してもすぐに大男に捕まってしまう。ここには何人もの人々が私と同じように捕まっていた。
修行という名の洗脳を終えた者は黒いスーツで「仲間」を増やす為に奔走する。黒い手袋をしたその手に握られた数十枚のビラには同じ文言が書かれていた。
『サンタクロース養成所。夏はブラックサンタとして新人発掘を行なっています。アットホームな会社です♪やりがいのある職場です。』
女は男に問う。風に吹かれる黒髪がさらさらと音を立てているようだった。
薄汚れたガードレールに腰かける女は、ねぇと重ねて問いかける。
「きみは、何を守りたい?」
この星の未来?親に見捨てられた子猫?それとも、大切な誰か?
どこか弾んだ声音は子どもの無邪気さを思わせた。トン、と地面に足を付けば、白いワンピースの裾が揺れる。
「僕は、きみを護りたい」
女が手のひらの汚れを払うために俯いた頭上に、男の声が降った。
驚いた様子で男を見上げた女は、やがて不器用に笑う。
「あはっ、やっぱりきみは優しいんだねぇ。……いま、お別れの話してたのにさ」
再び俯いた女の手を男は黙って握った。
「私を護っちゃったらさ。この星も、親に見捨てられた子猫も、きみの大切な誰かも……ぜんぶ、死んじゃうんだよ」
泣き出しそうな声が男を止めようと訴える。その、震える肩を男は抱いた。
「……僕は、きみのこともこの星も全部護るから」
そうして、決して叶えられない誓いを立てたのだ。
本当の子どもじゃないんだって、鏡を見て思った。似てない。お姉さんに話したら、今更なによ、とため息された。
部屋にある大きな鏡。嫌な現実を浮き彫りにする。僕はがんばってもパパ・ママのようになれない。どうしてこんな姿に生まれたんだよ。努力したって無理だよ。家から出たほうがいいのかもしれない。ドアノブを見つめ、悲しくなった。
扉があく。入ってきたパパに思わず飛びついた。ママが驚いてる。だけど、僕はなくしかできなくて。
「具合が悪いのかい。明日、病院行くか?」
「ごめんね、わからなくて。私たちも猫だったら、良かったのに」
「人間も猫も、親子はそんなものかもな」
お姉さんが、ニャーとないた。そうか。お姉さんもだったんだね。パパ・ママもみんな、同じ悩みをしていたんだ。
僕は猫で、猫と人間の家族がいる。姿や血は関係ない。この家族を大切にしようと思った。