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物語書いったー
物語書いったー
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(前回タイトル間違えましたすみません)
小学校での一悶着のあと、異世界調停センターの2人と数人の警察官達は閑静な住宅街を
歩き、徒歩でで移動していた。
お巡りさんを見て手を振る小さな子に男性職員もついでとばかりに手を振りかえす。
数人の警察官のうち、1番若い警官がセンター職員たちをちらりと視線だけで観察する。
男性の方は警察官たちより頭一つ分背が高く、
威圧感があるが、常にへらへらと笑みを浮かべているせいか、あまりプレッシャーを感じない。だが、先ほどの笑みを消した時の冷たさを思い出し、軽く身震いをした。
友人はそう謎を投げかけながら僕を見下ろす。
「ウミガメのスープか」
「質問ゼロでも答えられそうだけど入門には良い問題だろ」
「どうかな」
頭の横辺りをまさぐる。こつんと目的のものに指があたった。スマホを持ち上げてスイッチを入れる。画面が眩しい。
「質問」
「どうぞ」
「男が太陽を見た窓は西にありますか」
「イエス」
「男はその日、約束がありましたね」
「イエス」
「男はそこから挽回できると思いますか」
「さぁ? では解答をどうぞ」
体を起こしベッドの端に座る。伸びを一つ分の間をおいて僕は答えた。
「男は友人に会う約束をしていたけど、部屋に西日が入ってくるくらいの大寝坊をしたので絶望した」
「おめでとう大正解」
やる気のない拍手付きの棒読みな賛辞だった。
「まずはごめん。それからもう二度としません、多分」
「奢り一回で許そう。まったく、事故とかじゃなくて良かったよ。あと鍵はかけとけ」
そう呟きながらスマホを手に取る。
そして物語書いったーを開く。
短めの文章を書いて閉じる。
「もう少し頑張ってみるか」
書きたい気持ちに気持ちが切り替わった。
だから保守をする。
真夜中の午前2時。スマホの液晶画面から発される光が、彼の顔を青白く照らす。きっと今の自分は、暗い部屋に降り立った亡霊のように見えるのだろうなとぼんやり思う。ああ、それにしても。
「……あー、書けない」
メモアプリを見ながら呟く。先ほどから書いては消し、書いては消しを繰り返しているせいで一文字も進まず、真っ白なままだ。別に職業として物語を書いているわけでもないし、いわゆる趣味の原稿に追われているわけでもない。ネットに作品をあげてはいるが、そうしたところでバズるようなものでもない。いいねの数は大体0が常で、感想も0。金も信頼も名誉も掛かっているわけではないのだから、正直今すぐ書くのをやめたところで、誰も困りはしないのだ。最近はそこまで誰かに承認されたい欲求もないし。
その度、ポトリポトリと地面に雫が落ちる。
自分の瞳からからその雫が落ちている事に
今気づいた。
なぜなんだろう?わたしはなんで泣いているのだろう?
ポタポタ、ポタポタ。
悲しいのか、嬉しいのか、わからない。
勝手に足が動くように
雫を流しながら歩き続ける。
流れ続ける雫に小さな疑問が浮かぶ。
いや、本当にこれは涙なのか?
右手で頬に触れる。
ほのかに暖かい。
右手に目をやると、そこには深紅が
ベッタリと張り付いていた。
涙かと思った雫は、血だった…
わたしはどうして…血を流しているんだ?
わたしはどうしてこの道を歩いているんだ?
わたしは…一体誰なんだ?
わたしは…何処に行こうとしているんだ?
わたしは…生きているのか?
わたしは、歩いている道の先が見えなくなるほど血の雫を流していた。
不安を感じるほどの余裕などない。
少しずつ意思が希薄になっていく。
わたしは、そのまま深い深い闇の中に消えていった。
先生が児童たちに確認する。
「「「「はーい!」」」」
児童たちは声を揃えて返事をする。
「よーし、では使い方の説明だ」
先生は黒板にチョークでイラストを描き始めた。描いているイラストは今児童たちの手にすっぽりと収まるサイズの楕円形にキーホルダーの金具が付き、真ん中にボタンがあるもの。色は全て黄色。
「これは『異世界防犯ベル』、異世界誘拐に遭ったときに助けを呼ぶ為のものだ」
「せんせー!質問!」
「「異世界誘拐ってなんですか?」」
先生と児童の声がハモリ、児童たちから笑いが溢れた。先生はパンパンと手を叩き、仕切り直して説明を始めた。
「異世界誘拐とは10数年前から起こっている犯罪だ」
犯罪という言葉に児童たちはざわつく。
「世界は今自分達が存在している以外にも存在している。」
もともと人気のなかった公園で、彼女は硬直する。一体どうしてこんなことになったのだろうか。先ほどまで風にそよいでいた桜の枝も、夕闇の道路を走っていた車も、全てが動きを止めている。真っ白なビニール袋も、海を漂うクラゲよろしく宙に浮いたままだ。
まるで自分の方が、写真の世界に迷い込んでしまったかのようだった。
異世界転生を夢見ることはないが、まさか時間の停止能力に目覚めてしまったのだろうか。いやもしくはこのビニール袋が特殊なのか。そう思って彼女はビニール袋に触れてみたが、特に何も起きなかった。かさりという軽い音を立てただけで、相変わらず世界は静まり返っている。地面に伸びる遊具の影だけが、ひたすら長い。
常日頃ならパニックになっていたかもしれない。だが今日は尋常でなく疲れていた。驚きつつも「まあ人生長いんだからこんなこともあるかもしれない」と思うくらいには。
今日も誰かが書いた文字を自転車で運ぶ。しばらく薄紫色の道を走ってから、彼は目的地に辿り着いた。今は誰もいない路地。その突き当たりの白い壁に、運んできた文字をぺたりと貼り付ける。
正しい文字の並びになっているか、文字の形がずれていないかの確認を終えて頷く。今日の仕事はこれで終わりだ。再び自転車に乗り、彼は帰路を辿った。
行きと違い、さまざまな文字を目にできるこの道が、彼は好きだった。色々なニンゲンの感情が壁に書かれている。それは誰かに宛てた手紙のようでもあり、まどろみの中に佇む一人の呟きのようでもあった。ただ一つ違うのは、「ほしゅ」「保守します」の文字だ。先ほど彼が運んで貼ったのと同じような意味合いの言葉を目にするたびに、彼は書き手のことを考える。
最初は見間違いだと思った。だが何度瞬きをしても、何度手に持つ角度を変えて写真を見ても、間違いなく写真の上にすみれが咲いている。春の曙を柔らかに帯びた藤紫の花弁も、麗らかな日差しに佇む深緑の葉も、全てが瑞々しい。まさにたった今咲いたと言っても過言ではないような、そんな息吹を感じさせた。
何度目かの凝視をしてから、ため息をつく。
そもそもこのすみれは、写真から実体化して出てきた、という類のものではない。写真自体は何ということはない、昔旅行に行った際撮ったものだ。友人と二人で。
そう、あの頃は楽しかった。お互いに文を描き、絵を描き、そうして出来た作品について夜が更けるまで語り合った。空が白んでも瞳の輝きは薄れず、行こうと思えば虹の麓にさえ走っていけるように思えたものだった。
けれど、それももうない。この写真を最後に、全てが泡となって消えてしまった。
「ごめん、遠くに行きたいんだ」
何度も耳に蘇る声が、心を刺す。
「それは良かった。やはり緯度が高い所は違いますね」
私はそう返しながら、小鍋の中に計量しておいたグラニュー糖100gを注いだ。
最近、お菓子になってしまう人が増えている。そのまま体が人型にくり抜かれたジンジャークッキーみたいになってしまう人もいれば、彼のように体を構成するすべての組織がお菓子になってしまった人もいる。
亜寒帯の夜はすこぶる寒い。気温がマイナス5度を下回る日すらある。だが体のほとんどが生菓子でできている彼にとってはむしろその気温が好都合で、この辺りに暮らすことを薦めたのも私だ。
彼が私に笑いかける。
いかにも理想の恋人というような、綺麗な見た目に優しい声だった。
違う。
私の恋人はあんな人じゃなかった。
…私はパソコンを操作して、彼をゴミ箱に移動した。
No50、と書かれたファイルを消去する。
五十人目の私の恋人は失敗作だった。
次こそは完璧な彼を作ってみせる。
そう決意して、五十一人目の彼を作り始めた。
日常の風景の一欠片を、一つの写真に収める。
いつの間にかそれが趣味になった僕に
「...ねえ、私のこと撮ってくれない...?」
と、僕のところに来る同級生の子がいた。
どうやらその子は、人前で笑うことが苦手なようで。
「はい、チーズ」
合図をしても、顔は強張ってうまく撮れない。
「ごめんなさい、全然笑えなくて」
そう言って泣き出されてしまった。
...でも、僕はその姿に思わず見惚れてしまった。
...この姿を切り取りたい。この瞬間を撮影したい、と。
「ちょっと失礼するね、」
___カシャリ。
「勝手に撮るなんてごめん」
僕はすぐ謝るとその子は写真を見て
「...ううん、私が言うのもおかしい話かもしれないけれど」
ホッとした表情でこういった。
「初めて自分に自信が持てた気がします」
僕はその子の少し嬉しそうな表情を見て、安堵した。
数日後
___カシャリ。とシャッター音が鳴り響くところに
眩しい笑顔を咲かす同級生の姿があった。
辞めることも、この世を儚むこともできず
ただただ人生をすりつぶし続けていた。
そんな絶望的なある日、コンビニで廃棄直前の弁当を買い、少しでも帰宅を早めようと公園を突っ切っていた時、今の自分並みに弱々しい声を奇跡的に私の耳が拾った。普段ならもう疲労感でぼろぼろで聞き逃していただろう。だが、その日はほんの少しだけ、ミリ、いやミクロだけ余裕があったようだ。帰宅を急いでいた足はその弱々しい声がする方向へ自然と向いていた。
その先には薄汚れた小さな段ボール箱。中には弱りきった子猫が2匹横たわっていた。
研究を引き継げるのがわたししかいないことを利用して、わたしはこの数年間、先生を独り占めにできた。
ひそかな、ひそかな幸せだった。
でも今日、最終段階になってしまった。
明日の早朝に処分する、と上から言われた。
先生はやっと奥さんと同じところに行ける、きみもすまなかった、私を忘れて幸せに生きろとおっしゃった。
結局あの女に奪いかえされるのか。いや、初めから奪えてなどいなかったのか。
空が白み始めても、わたしは眠れなかった
そう呼ばれる街があった。
外はずっと暗く、ここにずっと住んでいる住人は
太陽の存在すら知らない者もいるという。
私はこの街へ旅することになった。
「ようこそ、永遠に暗い宵闇街へ」
そのせいか、月光を浴びすぎたのか...はわからないが
死ぬほど暗い人物が案内をしてくれることに。
ふと、案内人が光蓮郷でもらったチャームを見つめた。
「ああ...、君は光蓮郷に行ったんだね。」
と案内人から言われたので、私は頷いた。厳しい表情で、案内人は
「君は、あの人達にどんな印象を抱いている?」
と質問をされた。
「明るいのは本当だったが、あれは本心からなのか?」と私は素直な疑問をぶつけた。
「不正解」と案内人は告げる。
「この宵闇街と光蓮郷は、実は全く同じ住人が住んでいる。...何なら光蓮郷の案内人に会えるけれど」
思わず私は「会ってみたい」と口に出した。
「...びっくりすると思うけど、ついてきて。」
そう案内されると、確かにそこに光蓮郷の案内人がいた。
そう呼ばれる街があった。
外はずっと明るく、ここにずっと住んでいる住人は
月の存在すら知らない者もいるという。
私はこの街へ旅することになった。
「ようこそ、永遠に明るい光蓮郷へ!!!」
そのせいか、太陽光を浴びすぎたのか...はわからないが
死ぬほど明るい人物が案内をしてくれることに。
「光蓮郷はな、ずっと皆が明るくて楽しい街だろう!!」
ふと街の景色を見ると、ダンスをしている団体や
祭りの屋台が色とりどりに見える。
...しかし、違和感を覚える。
「この街に出てくる人々の顔が、異様に明るいと感じた
ダンスをしている団体の人も、屋台の店番も...さらには案内人も」
祭りの屋台を少し覗いた後、案内人が
「最後に一つ、光蓮郷のおまじないを授けよう!!」
というと、案内人が太陽のチャームが付いたネックレスをつけてくれた。
「じゃあまたな!!!」
そう案内人に言われ、光蓮郷を後にした。
...何故光蓮郷の住人は、異様に明るかったのだろうか。